序
「いやー、俺達が世界一かあ…実感湧かないな…」
ぎゃあぎゃあと食堂で騒いでいた円堂がぽつりとそう言った。それにより全員が静まり返る。確かにそうだったからだ。ずっとずっと努力し続けていろいろあったがそんな俺達が世界一。
「世界一、かあ…」
食べ終わってぼんやりとサッカーボールを抱えていた円堂が確かめるように言った。その後ふんわりと破顔させた。円堂にしては珍しい笑い方だな、と思いつつ自分も笑っている事に気付き慌てて顔を引き締めた。
「っうわ!」
ほのぼのとした空気が漂い始めた時、いきなり円堂の短い悲鳴が聞こえた。どうしたのかとそちらを見ると先程まで円堂が抱えていたサッカーボールがふわふわと空中に浮いていた。は、と間抜けな声がぽろりと零れた。
浮いていたサッカーボールは円堂の元にすごいスピードで落ちて、
円堂の頭の中に沈んだ。
「っ円堂!」
ゆっくりと目を閉じて机に倒れこむ円堂。とん、と完全に机に身を任せた後、円堂はどんな事をしても目を開かなかった。
◇
「守!守ー!起きなさい。」
そんな母ちゃんの声が聞こえてうっすらと目を開いた。あれ、さっきまで俺、世界一になったから皆と打ち上げしてて、そしたら…
「………っ!?」
サッカーボールが頭の中に入ったんだった。そっと頭に触れても違和感は特に無くって、
「てか何で俺の部屋…?」
ぼそりと疑問を口に出した瞬間、
「今日からまた練習、始まるんでしょー!」
もう、起きなさいったら!!
部屋に母ちゃんが入ってきた。ほら、いつまでも寝てるんじゃないの!とのんきにいう母ちゃん。世界一になってから初めて会うのにあっさりしすぎじゃあ…。それにこの会話…
「まさか、エイリア学園前の時と同じ…!」
嫌な予感がした。けど母ちゃんに聞いたら怪しまれると思って素直に起きて何もないかのように振舞う。
下に降りてご飯を食べながらいつも通りに話す。すると母ちゃんが衝撃の一言を言った。
「全国大会優勝チームのキャプテンが朝練に遅刻じゃかっこわるいわよ!」
やっぱり。頭の中で納得。さっき試した所イジゲン・ザ・ハンドもゴッドキャッチも出来たから多分俺はタイムトリップをしたんだと思う。
そこで湧き上がる少しの絶望とたくさんの楽しみ。
また皆と戦える!!!
うずうずして居ても立ってもいられず準備をしようと階段を駈け登った。
昔を歓喜
(皆との終わりが遠ざかった!)(また皆で楽しくサッカーができる!)
円堂さんが病み気味………?大人びてるかなあ…