悲劇喜劇
そっからなんやかんやで傘実中に行く事に。今ジェミニストームがそっちにいるからということなのでどこか真剣そうに皆それぞれどこかを見上げている。
かくゆう俺も、さすがに大事な仲間たちが傷つく事が分かっていても自分の欲望だけで彼等をわざと危険にあわせるなんて最低な奴だと自己嫌悪。
「…………………どうしよ、っかな」
小さく小さく呟いて自分の手を握り締めた。俺が本気を出せば点を取らせない自信はある。ただ点を取れないだけで、引き分けってとこかな、
「…でも、シナリオが、」
狂っちゃうのは絶対阻止しなければ行けない。シナリオが狂ったらどうなるか分からないからそれは怖い。あくまで無力な円堂守で今はいるべきなんだ。
そうと決めたら即座に明るく笑って皆に叫んだ。
「っよーし!!皆ァ!絶対勝つぞー!!!」
おおー!!
力強い拳を突き上げた皆に紛れた鬼道のこちらを睨み付けている表情には気付かなかった振りをして、これからの悲劇に気付かない振りをして、また笑った。
◇
学校を助けて下さい!必死に俺達に縋りつく傘実中の生徒達に無責任に任せろ!といってグラウンドに入った。
レーゼが、緑川が、こちらを見た。痛いの嫌だからお手柔らかにしてほしいなあ、なんて。
試合が始まった。本当に一方的で皆がどんどん傷ついていく。こんなに遅い球もまだこん時は見えさえしなかったのか…そう思うと自分成長したなあ…!感激せざるを得ない。しかし感激するところが違う気がしてならない。
ゴール前まで攻めてきたレーゼがそれなりに早いスピードでボールを上にあげて、パンドラにパスをする。そのままこちらにシュートされて向かってきたボールを思わず不自然じゃない程度に避けた。
(………!顔面に当てた筈なのに、避けた…?)
(やべ、避けちゃった)
途中から豪炎寺が参戦したものの状況は変わらず、俺はゴールを守る気がないという最悪な状況は変わらず。
暇になってきたから少しくらいはふざけてもいいかなあとか閃いてちょうどゴールに入って足元に転がってきたボールをドリブルして上がっていってみた。
「…なっ、円堂…!?」
「何してるんだ、ゴールががら空きだぞ!?」
皆の視線と声を無視して上がっていく。 途中でレーゼが目の前に立ちふさがって俺を止めようと走ってくる。ふ、と小さく笑って躱した。驚きに目を見開くレーゼにまた笑いかけてボールをわざと渡した。
周りから見れば俺はボールを取られた様に見えると思う。
しかし実際は力の差をはっきり見せつけれたからもういっか、と思ってもう十分楽しめたしなんて考えて倒れた振りをした。
「円堂ーっ!!!」
「キャプテン!」
「…………鬼道、今の、…」
「…ああ。なにかおかしい…」
悲劇喜劇
(円堂……あれは、本当に円堂か…?)