Why、











「キャプテン……何で、」



かつて自分がいた闇に堕ちた自分達のキャプテンをじっと見つめた。前と同じ顔で、違う笑い方をする円堂にどこかしら寒気を感じながら手を固く握り締めた。

ふるふると震える手を抑えてもう一度叫んだ。




「何でだよ、キャプテンッ!!!」






くつくつと笑う円堂に何がおかしい!とまた叫ぶ。叫んだところで意味は無いと知りながらも自分が出来るただ一つの事だったから、そうするしか無かった。(そうするしか、できなかった)






「何でって……………なあ?」




「っはぐらかすな!」






周りの皆はただ俺達のやり取りを見ているだけ。皆は俺より大人だから。子供の俺みたいにただ感情のままに行動しないんだろうな、と叫んでいる頭の端でどこか冷静に考えた。
コロコロとまるで図ったかの様に目の前に転がってきたサッカーボールをキャプテンの方へ思いっきり蹴る。遠慮無しに蹴ったボールは勢い良く向かっていった。当たる、と思った瞬間に。

なんとキャプテンは片手で受け止めた。







明らかに前より強くなっている力に驚愕する。エイリア石は相性によって発揮する力が全然違う。多分キャプテンとの相性が異常に良かったんだろう。なんと皮肉な事だろう。



まるで何も無かったかのようにこちらを見つめているキャプテンにどうしようもなく無力だと感じて悔しくなった。





「こんなもんか、レーゼ。」






「っ!!!!俺、は、レーゼじゃないっ!!!」




思わず脳裏によぎった過去に顔を歪める。俺は人に誇れる様な過去を何一つ持っておらず、思い出したのは自分が宇宙から来たと言っていたあの頃。
一番信頼していたキャプテンにその名前で呼ばれてショックだった。





「……なあレーゼ、」







「だから、レーゼじゃ、ないっ!!!」








「こっちに来いよ、」




「え、」







目に溜まっている涙にも、頭の端で望んでいた言葉を言われて喜んでいる自分にも、気付かない振りをして目を見開く。
こちらを見てうっすらと笑っているキャプテンに視線を向けた。







「なぁ、レーゼ。こっちに、来いよ。」









「…………俺、は、」





何を迷っているのか。もう二度と過ちを繰り返さないと決めたはずなのに。
どうしようもなく迷っている自分がいる。がくがくと手が震えて、心臓をわしづかみにされている気分になった。



汗がぽたりと地面に落ちる。





紫色が俺を誘惑するかの様に妖しく輝いてた。


「なあ………緑川…?」







「…………あ、…」




伸ばされた手を掴もうと一歩前に出る。キャプテンには別の理由があるはずだ。きっとそうだ。
無理矢理言い聞かせた頭は足をまた一歩動かす。



「緑川っ!二度も過ちを繰り返す気かい!?」






「あ、……ひろ、と…?」





「……………余計な事をしやがって」







俺はそっちに行かない!!ヒロトの声で冷静になった頭の中が無意識に進めていた足を止める。叫んだ先には残念だなー!と笑うキャプテン。







「じゃあな、」



踵を返して向こうへと歩んでいくキャプテンを止める人は誰もいなかった。何故だかその背中に頼りたくなって、自分はどうなってるんだ、と頭を横に振った。



「あ、緑川。次に会った時には、良い返事を期待してるからなー!」






くる、とこちらを振り返って笑ったキャプテンに目を見開く。と、同時に肩に置いてあったヒロトの手に力が入る。
とうとう我慢出来ずにぽた、涙が一筋流れた。




と同時に腰に回される手。ヒロトに抱き締められた。赤い髪がぱさりと肩にかかる。




「何で…?」


後ろから聞こえてきたヒロトの声。だけどその時の俺はそれどころじゃなくて。涙が止まらない。ぼたぼたと涙がヒロトの腕に落ちる。何で、何で、キャプテンは、






「キャプテン……………ッ!」







だから気付かなかったんだ。後ろですごく悲しそうな、苦しそうな表情をしているヒロトに。



「何で、君は…っ、」





Why、
(緑川、)((何で気付いてくれないんだ))





円→→→→→←緑川←←←←←←ヒロト


何で気付いてくれないんだ、てセリフはヒロトと円堂さん。うへうへ



ちなみに個人的にちーちゃんへ捧げます!!こんな駄文でごめんね…


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