「ピンク色の頭した人と目が合った瞬間、ウインクされたの」
「へえ」
「あれは絶対に私のことが好きだね!」


何だその思考。



きみといるとまるで魔法にかけられているみたいに不思議な感覚に麻痺する



名前がそんな話をしてきたのは2日前のこと。あれからずっと考えてる。うん、それってあれだろ、


「名前がじろじろ見てたからだろ」
「その話何百回も聞いたよ」
「…」
「まだそのこと気にしてるんだね」
「…き、気にしてねぇし!」


雪男の冷たい視線が向けられた。なんでそんな目で見られなきゃならねぇんだよ!


「兄さん、もしかして妬いてるの?」
「はっ、はぁ?」
「彼女が他の男子の話してるから拗ねてるようにしか見えないよ」
「はぁん!?んなわけねーだろ!」


「あ、苗字さんだ」
「え」


雪男の言葉に、友達と話している苗字を見つけた。と言うより目に入った。じっと見てると名前と目が合い、思わず逸らしてしまう。

やべ、逸らすとか感じわりぃじゃんよ。

目のやり場に困り、雪男の方を見ると雪男が「苗字さん、こっち見てるよ」と言って少しだけ笑った。

おそるおそる名前の方に目を向けると、あいつはがっちり俺の方を見ていて、手を挙げて大きく振っていた。それに手を振り返すけど小さめに。そして背を向けた。

はやくここからいなくなりたい。気まずい。


「りーん!」

「…んだよ」


振り向くとウインクひとつ落とし名前は一言、「エル オー ブイ イー!」と叫んだ。何だそれって突っ込む間もなく、隣からは雪男のクスッとしたいやな音が響く。


「ほらほら兄さん、ウインクして返事しないと」
「なっ、雪男、お前あいつに何か言っただろ!バ、バババッカじゃねぇの!」
「あぁ言ったよ。兄さんが拗ねてるって」
「拗ねてねぇし!」
「(…顔真っ赤)」



「……拗ねてはねぇけど、何かそれもどうでも良くなった」



言葉ひとつで変な気持ちになったり、嬉しくなったり、あいつの言葉って魔法みてぇ。

名前のところにゆっくり駆け寄ると「顔真っ赤だよ」と指差して言ってきて、名前は腹を抱えて笑った。


「…お前も顔真っ赤。慣れないことするからだな」
「あ、ほんとだ。すごく顔が熱い!すっごい緊張したからね。でもね、燐のためなら何だってできるよ」
「……んなこと、さらっと言うなよ」



(俺だって、)

111030