名前変換




雑誌を捲っていくとかわいい赤ちゃんの写真が大きく写っていた。こういうのを見ると子どもが欲しいなぁって思う。


おとこ



「志摩くん、これ見て」
「ん?」
「子どもってええよな」


雑誌を指差して見せると志摩くんは「へえ、かいらしい」と頬を緩ませる。そういった反応が純粋に嬉しかった。


「将来はたんと子どもが欲しい」
「やらしいなぁ」
「え、なんで」
「それだけヤるってことやろ」
「(なんで志摩くんてこないな人なんやろかー)」
「まぁ頑張ってください」


へ、何を頑張れって?どっかにトンカチないかな?あったら志摩くんの頭をどついたるのに。なんて恐ろしいことを想像してしまった私は、開いていた雑誌を筒のように丸めた。

仮にもあんたは私の恋人やろ!えい!


「いたっ、なんしはるん」
「ふん、将来は子ども好きな旦那さまを捕まえて、子どもに囲まれたぬくい家庭を築くさかい」


ムッとして志摩くんを見ると、志摩くんはいつもの調子で自信あり気な声を出す。


「その辺、心配無用や」
「なんで」
「俺、協力的ですえ。子どもこしらえるの大好きやし」
「(もういっぺんどつきたい)」


志摩くんはごそごそと鞄の中を探り出し、取り出したのはエロ本だった。
あ、それ昨日志摩くんがコンビニで買ってたやつだ。


「これに書いとったけど、女の子を気持ちようしたら男の子が生まれやすいんやて」
「何その豆知識。…志摩くんが言うとなんかいや」
「やらしい想像でもしたんかいな」
「思考回路断ち切ったろか」


また丸めた雑誌を志摩くんに目掛けて振り下ろす。志摩くんは笑いながらエロ本を盾にして自分を守っていた。


「なぁ、大家族って男が多いと思わへん?」
「あぁ、確かに」
「俺はそれを見て思うんや」
「(いやな予感がする)」
「やるなぁお父さん、って」
「(煩悩炸裂やな)」


余所の夜の事情に関心を向けるのやめてほしいなんて絶対に言えない。
最近、私の扱いをつかんできた志摩くんはことあるごとに恥ずかしがる私を笑いものにする。


「ほな、名前ちゃんの子どもは男かいな」
「へ?」
「名前ちゃんて感度ええですし」


いよいよ私の怒りも頂点へ達した。そういうことを教室で言うなよ。ほんまええ加減にしいや。
また雑誌で頭を叩いてやろうとするけど上手に避けられた。同じ技は通用しないということか。敵もなかなかやるではないか。

打撃がだめなら魔法でどうだ。食らえ言葉の魔法攻撃!


「そないなら、志摩くんちのお母さんも感度ええんとあらへんの。あんたんち、男兄弟多いやろ」
「…」
「それか八百造さんのテクニックがえらいええとか」
「…」


どうやら自分の両親のことになると滅法弱くなるようだ。志摩くんはげっそりとした表情で一言。




「名前ちゃんてやらしいわぁ」
「(どっちが!)」





(これから両親をどういう目で見たらええんですか)
(知りません)


20111001
いやら志摩家」様へ提出。
ありがとうございました!