酔いどれてトロトロ
*甘える方法の続き


 いっぱいいっぱいキスしてほしい。いっぱいいっぱい触れてほしい。いっぱいいっぱい……気持ちよくしてほしい。

「んっ、あやと、くん」

 優しい綾人くんは大好き。今まで冷たかったから、何かあったんじゃないかって不安になるけど。大切にされていると実感できるから。……でも。

「続き、しないの?」

 酔っているからか、いや綾人くんに触れられるといつもそうだ。体が熱くてたまらない。でも綾人くんは首筋や胸元にキスを落とすだけで触ってくれない。抑えきれなくて、私は自ら綾人くんの唇に唇を重ねた。いつも綾人くんがしてくれるみたいに、舌を吸って、絡めて、舐め上げて。綾人くんの口から熱い吐息が零れた。

「あやとくん」
「……なに」
「からだ、あつい」

 綾人くんの肩を軽く押すと、思ったより簡単に綾人くんはソファーに仰向けに倒れ込んだ。驚いている綾人くんの上半身の服を脱がせて、キスを落としていく。小さな胸の突起に吸い付くと、綾人くんの体はぴくんと震えた。

「あやとくんも、乳首きもちいいの……?」
「うるせぇ見んな」

 見上げると、見えないように手で目隠しされた。綾人くんの手は見惚れるほど綺麗だ。私の小さくてぷにぷにしている手とは違って、固くて大きくて指が長くて。私はその手をカプリと咥えた。そして綾人くんの自身を愛撫するみたいに舌を這わせる。咥えたまま舌で舐め上げるのが気持ちいいって、綾人くんは言ってた。夢中で指を舐めていると、綾人くんと目が合った。興奮しきっている顔。ああ、どうしよう。止まらない。

「あやとくん」
「……んだよ」
「もっと、甘えたい」
「……」
「わがまま、言っていい?」
「……なに」
「何も考えられないくらい、抱いて」

 たまに思うの。綾人くんが誰もが振り返るようなイケメンじゃなくて、普通の男の子だったら。私はそれでも綾人くんが好きだった。私の選択肢には綾人くんしかいなかった。でも、綾人くんは?私は綾人くんに釣り合うような美少女じゃないし、綾人くんの周りにはもっともっと綺麗な人がたくさんいる。どうして私なの?私がもっと可愛かったらこんなに不安にならなかったかな。
 綾人くんは少し不機嫌そうに顔をしかめて、起き上がった。ああ、変態って嫌われちゃうかも。私はいつも、こんなに不安で。

「……俺のことは考えろ、馬鹿」

 でも綾人くんはそう言ってまた私を受け止めてくれる。私をソファーに寝かせて、優しく体を開いていく。綾人くんが触れたところから熱が広がっていくみたいに。私の頭の中が綾人くんでいっぱいになる。苦しい。でもそれは今までみたいに不安だからじゃなくて。

「しあわせ」
「……」
「頭の中も、からだも、綾人くんでいっぱいなの」

 綾人くんは大きくため息を吐く。そして少し強引に足を開いた。

「……我慢しようと思ってたのに」
「え?」
「挿れるぞ」

 ぐっと、圧迫感が襲ってきた。いつもと少し感覚が違う。そこで気付く。綾人くん、ゴムしたっけ?

「あやとくん……?」
「いや?」
「え?」
「責任取るって言い方はあんま嫌だけど」
「……っ」
「お前を泣かせるようなことにはしない」

 それは、初めて綾人くんの口から出た未来への言葉だった。離れない、とか。嫌いにならない、とか。そんな風に言ってくれてはいたけれど、ずっと一緒にいる方法を口に出してくれたのは初めてだった。

「いや、じゃない」
「……ん」
「あやとくん……っ」

 綾人くんが動く度、私の中がいやらしく綾人くんのそれに絡みつく。荒い吐息が混じり合って、私はまた綾人くんにしがみつく。綾人くんは優しく、包み込むように私を抱き締めてくれる。ぎゅっと抱き合ったまま、私は中に綾人くんの欲望が弾けるのを感じていた。

***

 はっと目が覚めた時、辺りは真っ暗だった。私はいつの間にかベッドで眠っていて、綾人くんがわざわざベッドに運んで体も綺麗にしてくれたのだと分かった。隣に綾人くんの姿はない。どこかに行ったのだろうか。仕事?お酒のせいかズキンと痛む頭を押さえながらベッドから出ようとした時。

「……あ、何で起きてんだ」

 ガチャリと寝室のドアを開けて綾人くんが入ってきた。綾人くんは上半身裸で、その胸元には赤い痕がついていて。恥ずかしくなって目を逸らす。けれど綾人くんは気にする様子もなくベッドに座った。

「水飲むか?」

 綾人くんの目が見られないまま頷く。ん、と差し出された水を受け取ろうとしたのに、少しだけ触れた手に大袈裟に反応してしまってペットボトルを落としてしまう。綾人くんの目がこっちに向く前にベッドの上で土下座した。

「お、おおおお襲ってしまってごめんなさいっ」

 酔っていたとは言えかなり恥ずかしいことをしてしまった気がする。今まで受け身だったせいか、初めてあんなに綾人くんの求めてしまった自分が信じられない。自分の中にあんなに淫らな欲望が……

「……あのさ」
「はいっ」
「別にいい。付き合ってるんだから」

 反射的に上げた視線。その先の綾人くんは何故か顔を真っ赤にしていた。そんな顔を見たのは初めてで、戸惑う。どうして綾人くんは照れているのだろう。

「はっ、もしかして……」
「……」
「いやじゃ、なかった……?」

 図星だったのか、綾人くんの顔が更に真っ赤に染まる。私も何故か照れてしまって、二人の間に何だかむず痒い沈黙が走った。

「……勢いじゃねぇから」
「えっ」
「分かんねぇならいい」

 綾人くんは赤い顔を隠すようにベッドに入り私に背を向けた。その背中が今までにないほど近くに感じて、私もベッドに入ってその背中に頬を寄せたのだった。
TOPBACKSERIES2
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -