旦那様の憂鬱
「あー、疲れた」
「お疲れ様です」

 PCから離れて伸びをしたら、秘書の相田(28歳独身、美女)がスッと鞄を渡す。只今の時刻、午後9時20分。

「先に帰っててよかったのに」
「私は社長の秘書ですから。社長より先に帰るわけにはいきません」
「真面目だなー。じゃ、さっさと帰りますか」

 俺は相田から鞄を受け取って席を立った。
 大学生で会社を興して10年になる。その間、色々あったが何とかやってきて。地位は築けたと思う。
 エレベーターに向かう途中、チラッとオフィスを見たら真っ暗で。この会社の中で一番働く。それが社長。そう満足しながら歩いた。
 エレベーターの中で携帯を確認したら、着信が1件入っていた。俺はその名前をタップした。ワンコールで出る辺り、かなり俺からの電話を待っていたのだろう。

「もしもし、電話した?」
『うん、何時頃帰ってくるのかなーと思って』
「今から帰るよ。いつも遅くなってごめんね」
『分かった!じゃあご飯温めるね。気を付けて帰ってきてね!』
「了解。真子、何か欲しいものあ……」

 言葉の途中でブチッと電話が切れた。その後に流れるのは虚しい不通音。苦笑いしながらも、足は自然と急ぐのだった。

***

「ただいま」
「おかえりー」

 家のドアを開けると、パタパタと走ってくる音がして。妻がふわりと微笑む。毎回この笑顔には癒される。……んだけど。

「……何で裸?」
「えへへ、たくちゃんに聞いたの。なぎくんこういうの好きだよって」

 ……それ絶対からかわれてるだけだと思う。真子の言うたくちゃんとは、俺のいとこの拓也のことだ。クールにとんでもないことを真子に教え込む拓也と、それを信じて実践してしまう真子には今までも困らされてきた。そして、今日は定番・裸エプロンだ。もし俺以外の男が家に来たらどうするわけ。宅配便とかでもこの格好なこと忘れてこのまま出そうだ。

「……真子ちゃん。まぁ、好きだけどさ。俺以外には見せないでネ」
「当たり前じゃん!なぎくんだけだよ!」

 何言ってんの、とプンプン怒る真子が先にキッチンの方へ向かうと、当然背中からお尻が丸見えなわけで。……やっぱり真子は何も分かってない。そう、ため息を吐きたくなった。

「今日はね、真子ちゃん特製オムライスです!あと卵巻くだけだからちょっと待っててね」

 楽しそうに冷蔵庫を開けて卵を取り出す真子。既に劣情を催してしまった俺は、横から見て膨らんだ胸の先にピンと主張する乳首とか、それが見えそうで見えないとか、裾から覗く真っ白で柔らかい脚だとか、そんなのばかりを見てしまって。……ダメだ、やっぱり触らずにはいられない。
 俺は真子の後ろに立ってそっとエプロンの中に腕を差し入れた。お腹を撫でるとピクンと真子の体が跳ねる。

「んっ、び、ビックリした、なぎくん?」
「誘ったのは真子だよ」

 少し腰を屈めて、耳、首筋にキスを落としていく。その間もお腹を撫でて。指でツッとへその下をなぞると、真子は甘い声を上げた。

「こうやって襲われるの、想像してたの?」
「……っ、ん、して、ないよ……っ」
「……嘘。だって真子、強引にされるの好きだもんね?」

 俺限定だけど。首筋から背中を舌でなぞって。丹念に口付けていく。その間に自分のシャツのボタンを外していった。
 お尻も、脚も。ゆっくりと丁寧に舌でなぞっていくと、真子はトロンとした目で俺を見下ろす。可愛い。

「どうしたの、真子」
「っ、意地悪、しないで……」
「ん?」
「もっと、気持ちい、こと、して……」

 初めて抱いた時はウブだったのに。誰のせいでこうなったんだろうな。優越感のような、征服欲が満たされたような、そんな気持ちになりながら、俺は立ち上がった。

「気持ちいいことって?例えばここ触るとか?」
「ひゃ!んっ」

 真子の前に立って、ツンとエプロンを押し上げる乳首を突ついてみたら、真子の体は待ち望んだ刺激にびくんと跳ねた。指先でクリクリと弄ると、そこは更に大きくなってひくひく動く。真子は自力で立っていられないのか、冷蔵庫に背を預けた。

「はっ、ん、あ……」
「どうしてほしい?」
「っ、舐めて、ほしい……」
「……ん、いいよ」

 触れるか触れないかのところでわざと舌を動かす。真子は荒い吐息を隠しもせず食い入るように見つめていて。エロい顔。散々焦らした後、躊躇なく吸い付いた。吸いながら、乳首を舌で転がす。真子はコリコリと弾かれるのが好きだ。真子は待ち望んだ刺激に体をビクビクと跳ねさせ、甘い声を上げる。胸を愛撫しながら下半身に手をやれば、太ももを蜜が伝っていた。俺はその蜜を指で掬いながら、中心に近付いていく。自然と脚を開く真子。そしてそこに触れると、真子はその場に座り込んだ。

「……感じすぎ」
「んっ、だって……っ」
「ベッド行こっか」

 頷いた真子を抱き上げて、俺は寝室に向かった。
 ベッドに寝かせると、すぐに脚を大きく開かせる。そこは暗い中でも分かるくらいてらてらと濡れていて、俺を誘う。恥ずかしそうにしながらも俺から目を離さない真子にチロリと舌を見せて、俺はそこに顔を埋めた。丁寧に舐め上げ、そして突起に吸い付く。手は胸を愛撫して。エプロンの脇から胸を露出させる。乳首を弾くと、真子の声が一層高くなった。

「あっ、ああっ、なぎくん……っ」

 足の爪先までピンと力が入っていく。イキそうなんだと分かって、俺は突起を吸い上げた。びくん、びくん。一気に体が強張って、弛緩した。
 イッた後すぐの真子の体は敏感だ。起き上がって真子を見下ろすと、はぁはぁと荒い息を吐きながら、胸はエプロンの脇から出ているし大きく開いた脚の間はひくひくと痙攣している。思わずゴクリと息を呑んだ。これで我慢しろって言う方が無理。
 カチャカチャとベルトを外し、それを出すともちろん準備万端で。濡れたそこに擦り付けると真子が俺を見た。

「挿れるよ?」
「ん……」

 グッと腰を進めると、イッたばかりの中はうねって俺を奥へ奥へと誘った。きゅうきゅうと締め付けて絡み付いてくる。少しでも気を抜いたら持って行かれそうだ。

「あっ、ああっ」
「ヤバ、すっげー気持ちいい……」

 何度も腰を打ち付けて、何度もキスをして。ぶるりと腰が震える。真子の中は気持ちよすぎて、何も考えられなくなる。

「真子」
「ん……」
「愛してるよ」
「っ、わたしも……」

 はぁはぁと荒い吐息と、腰を打ち付ける音が響く部屋。真子の匂いも、吐息も、全部が俺を昂らせていく。
 真子を横に向かせて、脚を大きく開く。そのまま突くと、また違うところに当たって気持ちいいらしい。肩に乗った足がまた、ピンと爪先まで伸びる。

「イキそ?」
「んっ、ああっ、なぎ、く……」
「っ、はぁ、俺もイキそ……」

 きゅうきゅうと搾り取るように真子の中がうねる。全部持って行かれそうな締め付けを、何とか我慢して。真子が昇り詰めた瞬間、俺も真子の一番奥で欲望を吐き出した。どぴゅっ、どぴゅっと射精する。真子はそれをトロンとした顔で受け止めた。


「なぎくん、お腹空いたよね?すぐやるね」
「あぁ、いいよ。後は俺がやる。出来たら呼ぶからちょっと横になってな」
「うん……ありがと」

 セックスの後、真子はあまり体に力が入らないのか動けなくなることが多い。俺が立ち上がった後も、真子はぐでんと横になっていた。
 リビングに入ると、キッチンカウンターに置いていた携帯が震える。見ると、拓也からだった。

『楽しかった?』

 うるせーわ、馬鹿。まぁ、存分に楽しませてもらいましたけど。俺は拓也に「クソガキ」と返してキッチンに入ったのだった。
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