夜と一万回の瞬き
「あの、よかったら連絡してください」

 そう言って渡された紙。そこには顔しか知らない人の電話番号とLINEのIDが書かれていた。

***

「たでーまー」

 先生が帰ってきたから慌ててぼんやりと眺めていた紙をゴミ箱に捨てた。彼は確か同じ学科の人だ。講義で何度か見たことがある。こんなのを貰ったのは初めてで、誰かに好意を向けられるのはあまり慣れていないから何だかソワソワする。

「お、おかえり」

 先生はネクタイを緩めながら寝室に入った。今日も疲れているみたいだ。……初夜から1ヶ月。実はあれから一度もそういうことがない。先生が疲れているのもあるだろうけれど、もしかして私の体を見てガッカリしたのだろうか。なんて、ネガティブに考えてしまうのは私の仕様なので許して欲しい。

「ご飯にする?お風呂?」

 自分で言っておいて新婚さんらしくてドキドキした。寝室を覗くとちょうど先生がシャツを脱いで上半身裸になったところだった。引き締まった体にドキリと胸が高鳴る。

「覗くなエッチ」
「の、の、覗いたわけじゃ……!いや、覗いたんだけど、そういう意味じゃ……!」
「ハハ、分かったって。先飯がいい」
「分かった……!」

 ヤバい。ドキドキする。緊張する。新婚さんってみんなこんななの。
 キッチンで料理を温めていると、着替え終わった先生がキッチンに入ってきた。そして私の背後から鍋を覗き込む。ち、近い。

「おー、肉じゃが。お義母さんに教えてもらった彩の料理は美味いからなー」

 機嫌良さそうにキッチンを出て行く先生。途端に私は緊張で止めていた息を吐く。先生と一緒に暮らせて毎日会えるのはとても幸せだ。でもまだ慣れない。緊張でおかしくなりそう。
 肉じゃがを温め終わり、不意に先生を見る。先生の後ろ姿しか見えないけれど、背を屈めて何かを拾ったのが見えた。……まさか……!
 慌ててリビングに戻り先生の前に回り込む。手の中にあったのはやっぱり、彼に渡された紙だった。

「違うの!これは、顔しか知らない人に突然渡されたやつで!」
「……」
「もちろん連絡もしてないよ?!ほら、私のスマホ見てくれても……」
「彩」
「何……ひゃっ」

 突然抱き上げられて変な声が出る。お姫様抱っことかロマンチックなやつじゃなく、荷物みたいに肩に担がれて。
 先生は私を軽々と運んだ。着いたのは寝室。ドサッとベッドに降ろされたかと思うとすぐに先生が覆い被さってきた。

「そんな必死だと逆に疑われんぞ」
「え゛」
「まあ彩が浮気なんてできるような器用な子じゃないってのは分かってるけど」
「ひっ」
「彩は俺の奥さんだって周りの男全員に言いてぇわ」

 先生は私の左手を取って薬指に口付けた。そしてガリっと噛む。全然痛くない。でもドキドキする。先生の目が獲物を目の前にした肉食獣みたいで。

「1ヶ月ぶりのセックスは燃えるなぁ、彩」

 Tシャツを脱ぎながら先生は妖しく微笑む。心臓が破裂しそうだ。先生はズルい。私が先生のことしか考えてないこと、分かってながらそんなこと言うんだから。

***

「うっ、ひゃあん、も、むり、」
「ちゃんと解さねぇとまだ痛いかもしれねぇぞ?」
「で、でもわたし、何回もイッて、んっ、んんぅっ」

 先生はずっと私のあそこに顔を埋めて愛撫する。イッたのももう何回目だろう。途中で数えるのをやめてしまった。

「せんせ、おねがい、も、ほしい……」
「ちゃんとおねだりしてみな?悠くんのおっきいので彩のぐちゅぐちゅのまんこ突いてほしいって」
「オヤジ臭いぃ……」
「おま、気にしてること……、チッ、しゃーねーな。オラ」

 先生は私の手を引いて起き上がらせると自分の太ももの上に座らせた。先生はパンツの中から自身を取り出す。既に大きくなったそれにいやらしくゴクリと喉を鳴らしてしまう。思わず揺れた腰に先生はニヤリと笑った。

「エッチだなぁ、彩ちゃん。焦んなくてもちゃんと突っ込んでやるから安心しろ」
「っ、そんなんじゃ、」
「ゴムするからちょっと待ってな」

 先生は慣れた手つきでゴムを取り付けると、私のお尻を揉んだ。そしてゆっくりと腰を進める。

「ん、お待たせ。彩ちゃんの大好きな悠くんのちんこだぞー」
「っ、下品なこと言わないで、んっ、んんっ」
「うーわ、熱っ、んなこと言って、彩のまんこ超嬉しそうだけど」
「だから、オヤジ臭いってばぁ……んっ、おっき、」
「はぁ、やべ、気持ちいいわ」

 先生は私を抱き締めたままベッドに押し倒すと、ガツガツと腰を振り始めた。

「痛くない?大丈夫?」
「んん、だいじょうぶ……」

 先生の背中に腕を回す。くっついて、1つになって、何度もキスをして。心地いい。気持ちいい。

「せんせ、」
「ん……?」
「全然、抱いてくれないから、ガッカリされたのかと思った……」
「不安にさせてごめんな。仕事で疲れてたってのもあるけど、まぁ、」
「んああっ」

 起き上がった先生が私の手を掴んで腰をグリグリと押し付ける。奥まで来て私は思わず背を仰け反らせた。

「可愛すぎて止まんねーの。1回ヤッたら歯止め効かなくなりそうでさ。あんまお前に無理させたくねーし」
「あっ、あっ、いい、いいのに」
「あんま可愛いこと言うと抱き潰すぞ」
「先生に、触れられるの、嬉しいから……っ、やっ、おっきくなったぁ……」

 ナカの先生が一回り大きくなった気がする。先生は腰の動きを止めてため息を吐いた。勝手に腰が揺れる。

「まだ2回目なのにエッチだなぁ。俺とエッチすんの気持ちいいの?」
「んっ、んっ、きもちい、」
「俺のちんこ好き?」
「ううっ、すき、すきぃ……」
「んじゃあ、悠くんのちんこ好きって言ってみて?」
「オヤジ臭いぃ」
「そこは言わねーのかよ。まぁいいや。俺もう火着いちゃったから。彩、お前明日学校行けると思うなよ」

 先生はそう言うと私の腰を掴んでガツガツと腰を振り始めた。イッても止まってくれない。頭がおかしくなりそうな快感の中、私は必死で先生にしがみついたのだった。

***

「うう、痛い……」

 身体中が筋肉痛だ。私はヨロヨロと壁にもたれた。先生はああ言いながらも結局日付が変わる前には終わってくれた。今日はどこか機嫌良さそうに仕事に出掛けて行った。

「これから遠慮しないで毎日抱くわ」

 と、とってもいい笑顔で宣言されたのには思わず苦笑いしたけど。

「大橋さん」

 後ろから呼ばれて壁から体を離す。理由が理由なだけにヨロヨロしているのをあまり悟られたくない。

「あ、昨日の……」
「うん、そういえば昨日名前も言わなかったなぁと思って。俺……」

 彼が首筋を見て固まる。不思議に思っていると。

「彼氏いるんだ」
「え?」
「ううん、ごめん、昨日のなしにして」

 焦ったように走っていった彼を呆然と見送る。結果的によかった……、のか?
 その直後、トイレに行って盛大なため息を吐いた。鏡に映る首筋の真っ赤なキスマーク。何故朝に気付かなかった……。彼が逃げていった理由に気付いて1人赤くなった。
 今度先生にもやってやろうか。生徒に突っ込まれて焦ればいい。……いや、先生なら

「あ?大人なんだからセックスぐらいするだろうが」

 とかって平然と答えて全然気にしなさそう。もう一度ため息を吐いて、必死で髪で隠したのだった。
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