甘えん坊とズルい君
「あぁぁぁ疲れたぁぁぁ」

 結婚してから分かったことがある。悠くんは意外と甘えん坊だ。
 家に帰ってきたと思うとゴロンとソファーに横になって私の膝に頭を乗せた。ネクタイを緩めながらもう片方の手で私の太ももを撫で、「癒されるわぁ」と変態ちっくな言葉を呟く。

「ご飯は?スーツ脱がないと皺になるよ」
「うーん……」
「お風呂入るなら入れるし。ね、ちょっとどいて」
「彩、冷たい」

 ジトッと見上げられ笑いそうになる。そんな風に心を許し切った表情を見せられると、愛しさが溢れてくるんだ。
 悠くんの髪を撫で、無防備な額にちゅ、とキスをした。カッコよくて可愛くて愛しい旦那さま。至近距離で視線が絡んだのは一瞬だった。少し体を起こした悠くんの手が後頭部に回る。そして唇と唇が重なった。何度も触れるだけのキスを繰り返した後、徐々に深くなっていく。舌が入り込んできた時、既に私の息は上がっていた。

「ん……、ご飯は?」
「焦らす気かドSめ」

 そんなつもりないけど。ふ、と笑ったら完全に体を起こした悠くんに押し倒された。初めて体を重ねてからベッドでしかしたことなかったけど、今日はここでする気らしい。スイッチの入った悠くんの表情を見て、ベッドに行きたいと言っても即刻却下されるだろうと思った。
 首筋にキスが落ちてきて、右手はお腹や背中を甘く撫でる。私の体温を上げるような触れ方。はぁ、と甘い吐息を零せば悠くんが顔を上げた。

「彩って普段ツンデレなのに意外と快感に忠実だよな」

 ツンデレも快感に忠実?なのも自覚なかったけど。キョトンとする私に悠くんはふっと笑ってあっという間に私の服を全部脱がせてしまった。
 うつ伏せになった私の背中にキスが落ちてくる。悠くんに抱かれてると気持ちよくて幸せで、ふわふわと浮かぶ雲のように愛しい気持ちが漂う。前に回ってきた手が胸をやわやわと揉んで、私は小さく喘いだ。

「彩」

 何を言うでもなく、何度も呼ばれる名前。その度に悠くんに抱かれてるって自覚する。
 背中、肩甲骨、肩、起き上がった私の体に舌を這わせて、そして胸の頂に達する。体全部が性感帯になったみたいにビクビクと体は跳ねた。勃ち上がったそれをコリコリと舌で弄られ、そしてちゅっと吸われる。見せ付けるようにいやらしく愛撫するのが悠くんは好きなんだと思う。

「ふっ、ん……」
「声もっと出せ」
「や、恥ずかし……」
「ここは恥ずかしがんのかよ」

 また笑った悠くんは胸を愛撫しながらソファーを降りた。私の脚を大きく開かせると簡単にパンツを取り払ってしまう。いつも生活しているソファーで全裸にされてしまうとさすがに羞恥心が湧き上がってくる。でも脚の間に悠くんがいるからどうにも動けなくて、されるがままになってしまった。

「すっげー濡れてる」

 悠くんの長い指がそっと中心に触れた。熱い蜜を掬い、その上の突起に塗り付けるように弄る。肩に掴まる手に力が篭った。

「あっ、ん……あぁ、」
「彩、見てみ。指挿れるから」

 悠くんの言った通りに視線を下に下ろすと、長い指がズププと私の中に呑み込まれていった。奥に来る毎にゾクゾクとした快感が背中を這い上がる。

「あ……、悠くんの、指、入っちゃった……っ」
「濡れてるからすぐ入る。動かすから見てろよ?」

 舌で胸を愛撫しながら、悠くんはゆっくりと指を動かす。人差し指が出たり入ったり。その度に快感が増していく。恥ずかしさよりいやらしくて目が離せない。ゾクゾクする。

「次ここ舐める」

 胸を愛撫していた悠くんは床に座り込んでそこに顔を埋めた。私に見えるように舌を伸ばして、突起を舐める。

「あっ……、や、あ、気持ちい……」

 悠くんが帰って来る前にお風呂入っといてよかった。そんな冷静なことを考えられたのは一瞬。簡単に絶頂に導かれる。
 ちゅ、と吸われて舌でコリコリと弄られ。指は2本に増え中でバラバラと動く。気持ちよくて何も考えられない。

「あ、イく、悠く、イきそ……」

 全身に力が入って強張る。悠くんがちゅうっと一際強く吸った瞬間、頭の中が弾けて真っ白になった。
 はぁ、はぁ、と余韻に浸っている間に悠くんは立ち上がりどこかへ行った。多分避妊具を取りに行ったのだと思う。すぐに戻ってきてカチャカチャとベルトを外し始めた。

「彩、平気か?」
「ん……」

 ソファーに寝転ばされて、力の入らない脚の間に悠くんが入ってくる。

「挿れんぞ」
「悠く、ん……っ」

 指とは比べ物にならない圧迫感。体を倒した悠くんが頭を撫でる。私は必死にしがみついた。

「あっ、ああっ、すご、い……」
「やらしいこと言うな」
「んっ、だって、おっきい……よ、」
「はぁ、お前ってほんと」

 体を起こした悠くんは熱い吐息を漏らして動き始めた。ギシギシとソファーが軋む。その度に私も喘いだ。気持ちよくて何も考えられない。

「あっ、あっ、気持ちい……、」

 擦られる感覚がたまらなく気持ちいい。私は悠くんが初めてだから分からないけど。悠くんは相性がいいって言ってた。悠くん以外だとこんなに気持ちよくないのかな。

「悠く……、キスして、」
「ん」

 体を倒した悠くんがふわりと抱き締めてキスをくれる。体温も、重みも。全部気持ちよくて泣きそう。絡まる舌に吸い付いて、全身で悠くんを感じる。ダメ、イきそう。

「あっ、悠くん、気持ちい、」
「……彩」
「気持ちよすぎて、も、ダメ……んんっ」

 頭が真っ白になった。悠くんの息を詰めたような声が耳元で聞こえた。

***

「腹減った」
「ご飯しよっか?」
「いい。彩体怠いだろ。それにもうちょっとこのままでいたい」

 ソファーの上で寝転んで、私の胸の上には悠くんの頭。悠くんはやっぱり甘えん坊だ。

「悠くん」
「んー」
「私悠くんと結婚してよかったっていつも思うよ」

 バッと起き上がった悠くんはまじまじと私を見て。その顔は徐々に赤く染まっていった。

「彩ってほんと……、いや、何でもない。悔しいから言わねー」
「何それ」

 隠すようにまた胸に顔を埋めた悠くんは、耳まで赤くなっていた。
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