優しい人
 目が覚めたら先生の寝顔が目の前にあった。うわっ、と色気の欠片もない声を出して飛び起きる。外を見れば辺りは暗くなっていて、私は慌てて携帯で時間を確認した。
 大学生になって、少し。まだまだ慣れないし友達とも上手く話せない。でもこうやって先生に会うと安心してまた頑張ろうと思えるから不思議。
 先生、怒ってないかな。せっかく会えたのに寝ちゃったりして。先生の寝顔を見ながら、やっぱり先生も疲れているのかなぁと思った。この春から先生は担任を受け持つことになった。やっぱり担任になると色々忙しいみたい。私には見せないけど悩んでることもあるんだろうな。
 無防備な寝顔を見つめ、好奇心に負けてそっと頬に触れてみる。温かくて男の人のくせにすべすべしている。先生、睫毛長い。指は無意識のうちに唇に向かう。キス、したいかも。私はゆっくりと近付き唇をくっつけた。

「……」
「……」

 目が合った。慌てて離れようとした私の手を先生は布団の中でガシッと掴む。そして真っ赤になった顔を引き寄せまた唇をくっつけた。

「っ、待っ」
「……はよ」

 下唇を食まれ、舌が入り込んでくる。ん、と勝手に甘い声が洩れて慌てて口を閉じた。けれどそれが意図せず先生の舌を食む結果になり、更にキスが濃厚になった。先生が片肘をついて体を起こす。覆い被さるように上から口付けられ、私の体は緊張で強張っていった。

「……彩」
「っ、な、なに」
「顔真っ赤」
「う、うるさい」

 至近距離で私を見下ろしながら、先生はふっと笑う。キスだけでこんなに心臓がバクバクするのにそれ以上なんて、私耐えられるかな。でも私の初めては、やっぱり先生に奪ってほしい。無言のまま穏やかに私を見つめる先生のほっぺたにちゅ、と口付けた。唇はさすがに無理だった。

「……好き」

 今すぐ真っ赤になった顔を手で隠したい。先生は穏やかに微笑んだまま、私の手をしっかりと握った。

「さっきは口にしてくれたのに」
「っ、寝てると思ったから……っ」
「じゃあ寝てる」
「目瞑っただけじゃん……!」

 目を瞑って私からのキスを待つ先生の顔を直視できず、腕から逃れようと身を捩る。その時脚が何かに当たった。その何かに気付いた時、カッと顔が更に熱くなった。

「……彩」
「っ、せんせ、」

 体をしっかりと抱かれ、首筋に熱い息がかかる。しっとりとした唇が何度も確かめるように肌を這い、大きな手が服の中に入ってきてお腹を撫でた。

「……抱きたい」

 熱く、欲望を孕んだ目。凄まじい色気に呑まれて息が苦しくなる。服を捲られ、下着を見られた。

「あ……っ、ん、」

 下着の縁をなぞるように、先生の熱い舌が滑る。大きな手の中に収まる手を見て、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。

「っ、胸、小さいから」
「そんなことない。見ていい?」

 聞かれても、頷けない。先生は欲望を孕んだ熱い目を向けながらも、優しく丁寧に私に触れる。ブラを引き下げられた時、恥ずかしいのにまるで慈しむようにそこにキスをされたから。私は不安なんか全部なくなって先生に全てを捧げたいと思った。

「……彩、好きだよ」

 可愛い、と耳元で囁きながら先生の指が胸の突起を弾く。ピクンと体が震えて初めての刺激に私は唇を噛んだ。

「最後までしないから、力抜いて。ちょっと触るだけ」

 耳に口付けられ、順番にキスが降りていく。心臓が皮膚を押し上げるほど激しく動いて体は固まって動かない。先生が胸の突起を口に含んだ時、体が熱くて変になると思った。

「っ、せんせい、」
「名前で呼んで」
「……、ゆ、悠、くん」
「……彩」

 先生は起き上がり、私の脚を開いてその間に入った。脚に口付け、ショートパンツを履いたままの中心に熱くなった自身を押し付ける。布越しにも感じる熱さにきゅんと体の奥が疼く。

「……いつか全部奪わせろよ」

 切なげに笑った先生に手を伸ばした。その手を握り、先生はもう一度キスをくれる。触れるだけのキスを何度かして、先生は私の服を整えてくれた。

「そろそろ帰らねぇとな」
「……うん」

 まだ、もう少しだけ一緒にいたい。その気持ちを読んだかのように、先生は隣に寝転んで抱き締めてくれた。

「……もう少しだけ、このままでいるか」

 頭を撫でてくれる大きな手の優しさを感じながら、私は先生の胸に寄り添った。
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