世界に明日と希望をくれた音楽に



 鼻歌まじりにギターを鳴らす。真っ暗な部屋の中、月明かりに照らされた弦が光っていた。
 自分の歌が上手いと思ったことはない。誰に褒められたって何度褒められたって、俺はどうしてもそうは思えない。
 いつだって俺は、自分を否定して生きてきた。そうすることで自分を守ってきた。誰に何を言われても、やっぱりそうなんだと思えるように。落ち込まないように。
 歌が終わりギターも弾くのをやめると、その瞬間感極まったような拍手が響いた。そして、「エージさん、すごい!やっぱりすごい!」と語彙力の欠片もない感想も。

「すごい以外言えねぇのかよ」
「だって!だってすごいから!」

 陽乃に手を伸ばすと、歩いてきた陽乃がその手に手を重ねる。そして、そのまま引っ張り抱き締めた。

「俺すごい?」
「うん!すごい!」

 思わず笑ってしまう。俺には分からない、信じられない俺自身を、陽乃は何の疑いもなく信じてくれる。

「……ならそれは、お前がいるからだよ」

 ふっと笑うと、陽乃も嬉しそうに笑った。
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