01

 洗面所で目が覚めた。冷たく硬い床に背中を預けていたからか、身体中が軋む。起き上がり、なぜこんな場所で寝ていたのか記憶を辿るも全然思い出せない。確か昨日はすずちゃんを抱き締めながら温かいベッドの中で寝たはず。混乱しながらも寝室へ向かう。

「……え?」

 寝室でもっと混乱した。俺がいる。すずちゃんをギュッと抱き締めて安らかに眠る、俺が。
 待て待て待て待て。あれは本当に俺か?……いや、すずちゃんが浮気などするはずがない。でも、でも何故俺がもう一人……?

「すずちゃん」

 とりあえずベッドまで行ってすずちゃんを起こしてみる。すずちゃんはぼんやりと目を開けて、俺のことを認識するとにこっと微笑んだ。

「かけるさん、おはよう……」

 キュン……、いや、めちゃくちゃ可愛いけど、今すぐ顔中にキスしたいけど、今はそうじゃない。キュンとしてる場合じゃない。

「すずちゃん、あのさ、そこにいるの誰……?」

 すずちゃんは、まだ覚醒しきっていない顔のまま後ろを振り返った。そして後ろで寝ている俺を見る。今話している俺と後ろで寝ている俺を交互に見る。

「ええ……っ?!」

 ……予想通りの反応だった。すずちゃんが飛び起きた振動でベッドが跳ねる。そしてベッドの上のもう一人の俺が目を開けた。

「すずちゃん、どうし……」

 目が合う。自分と見つめ合うというのは何とも不思議な気分だ。俺は固まっている。そうだろう。気持ちはよく分かる。

「とりあえず、落ち着こう」

 どうやって落ち着けというのか。頭の中で自分に突っ込みながらもそれしか言えないと思った。
 原因を考えてみても、やはり分からなかった。突然自分が二人いるなんてどんな原因があったにせよ到底理解できるものではない。ベッドの上で二人の俺が神妙な顔つきで呻る。すずちゃんはその間でオロオロしていた。

「夢です!そうに違いありません、きっと……」

 語尾が小さくなってるよ、すずちゃん。可愛いすずちゃんに少しピンと張りつめた空気が緩む。目の前の俺も同じことを思っているようで、ふっと微笑んだ。……というか、俺はいつもこんなにだらしない顔ですずちゃんを見つめているんだな。少し引き締めよう。

「あの、さ」
「はい」
「夢なら……、言ってみてもいいかな」
「はい」
「その……、3人で、シてみない?」

 目の前の男を軽蔑するよ。自分だけど。
 すずちゃんは優に1分はポカンとした後、「はい?!?!」と大きな声を出した。すずちゃん、君の恋人はとっても変態だ。自分だけど……。

「二人で気持ちよくしてあげられるし!ね?!」
「い、嫌です!何だか浮気してるみたいだし……」
「どっちも俺だよ?」

 もう一人の俺がすずちゃんに迫る。身体のデカい男に小柄なすずちゃんが迫られると、当然。

「う……」

 すずちゃんはとうとうベッドに仰向けに寝転んでしまった。すかさずもう一人の俺が覆い被さる。そしてすぐさま唇を奪った。いやいやガッツきすぎだろ俺。すずちゃんが自分以外の男とキスをしているのを見て、チリチリと胸の奥が焼けるような思いだった。……いや、俺なんだけど。
 くちゅくちゅと舌が絡まるいやらしい音が耳を刺激する。ふと見ればすずちゃんのパジャマのショートパンツの脇から可愛らしいレースのついた下着が覗いていた。……ダメだ、自分。何を考えている。でも、自分なんだけど自分じゃない男への対抗心がムクムクと湧き上がっているのも事実で。俺のほうが、絶対にすずちゃんを気持ちよくさせられる、なんて。

「ひっ?!」

 ショートパンツの上からそこをなぞるとすずちゃんが悲鳴のような声を上げた。責めるような目で俺を見る。でも、その瞳はもう一人の俺とのキスで濡れている。ゾワリと背中を興奮が走ったのが自分で分かった。
 下着の脇から指を侵入させる。そこはもうぐっしょりと濡れていた。俺はすずちゃんに見せつけるように蜜を掬い取って指を舐める。

「ん、んん、」

 すずちゃんの顔が真っ赤になった。可愛い。
 もう一人の俺がようやく唇を離してTシャツを捲り上げた。寝る時はブラをしていないすずちゃんの可愛い乳首が露出する。目の前の俺の喉がゴクリと上下したのが分かった。……わかる。何回見ても興奮するよな。胸の愛撫はもう一人の俺に任せて、俺は下半身の方に集中することにした。

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