孕んだ欲望

 朝起きたら私の顔が目の前にあった。一瞬意味が分からなくて固まる。でも次の瞬間飛び起きて洗面所に走った。

「翔さんだ……」

 洗面所の鏡に映るのは完全に翔さんだった。今、翔さんはベッドで寝ている。今洗面所にいるのは私一人だ。

「え、え、えええっ」

 何がどうなったのか分からないけれど、翔さんと私の中身が入れ替わってしまったってこと?いつもより高い目線。洗面台の鏡の中の私は、うっとりするほどの美しさだった。

「と、とりあえず翔さん起こそう……」

 私だけでどうにかできると思えない。私は走って寝室に戻り、翔さんを起こした。
 翔さんもはじめ、目の前に自分がいることに驚いていたけれど何だか楽しそうだった。いつもこんなに綺麗な翔さんの中にいるのに、私みたいなちんちくりんの中に入れちゃってすみません。原因も分からないしきっと私のせいでもないのにそんな風に思ってしまうのは、自分の目から見える自分の体の、本当は翔さんの体だけれど、全てが完璧だからだ。

「どうしてこんなことになったんでしょう……」
「さぁ?それよりさ、すずちゃん」

 翔さんは原因なんてどうでもいいみたいだ。でも私にとっては大事。だって原因が分かれば元に戻れるかもしれない。私には牧瀬翔を演じるなんて到底無理なことだ。

「エッチしよ」

 思わず二度見した。翔さんは楽しそうに服を脱ぎ捨てていく。目の前にいるのは翔さんだけど翔さんじゃなくて、体は私なのだ。

「は、恥ずかしいからやめてください!」
「どうして?いつも見てるよ」

 そうかもしれないけど、そんなエッチな脱ぎ方しません!!翔さんは見せつけるみたいに私の服を脱いでいって。何だろう、下半身が、熱い。

「ねぇ、すずちゃん」
「っ、な、なんですか」
「俺がいつもすずちゃん見てどんな気持ちになってるか、分かってくれる?」
「わ、わかりません!」
「うそ。だってもう大きくなってる」

 するりと股間を撫でられてぴくんと体が跳ねる。目の前にいるのは私なのだ。なのに、体が熱くなっていく。
 全裸になった翔さんは、私の唇にキスをする。何だか自分とキスをしているみたいでちょっと嫌だ。ちろりと唇を舐めて、半開きになった唇の隙間からねっとりと舌が入り込んできて。目の前にいるのは私なのに、キスは翔さんだ。
 キスをしながら、翔さんはジャージの上から自身を撫でる。びくんと体が跳ねて硬直する。

「自分を触るのはあまりいい気分じゃないけど」
「んっ、や……」
「すずちゃんの体をいつでも触れるのは最高」

 ペロリと舌を出して、翔さんは私の(体は翔さんの)ジャージと下着を下ろしていく。そこはもう硬く上を向いていて、何だかとても恥ずかしい。
 翔さんはとっても楽しそうに自身を扱き、私の体にキスを落としていく。先端から溢れ出してきた液体を手に塗り付けてくちゅくちゅといやらしい音を立てて昂ったそれを責め立てる。

「やっ、あ……」
「すずちゃん、気持ちい?」

 目を細めた翔さんが私の顔を覗き込む。顔は私なのに、その表情が翔さんで。キュンと胸が高鳴った。

「あっ、ああ……っ」
「イキそ?気持ちいいから我慢せずにイッてみな」

 耳元で囁かれて、ゾクゾクと快感がまた高まる。何かが込み上げてくる感覚。息が詰まる。はっ、はっ、と荒く浅い息を繰り返して。

「っ、やっ、ああっ」

 ドクン、と下半身が震えた。

「すずちゃん、愛してる」

 ちゅ、ちゅ、と顔や体にキスが降ってくる。それも束の間、射精の余韻でまだボーッとしていた私の目にとんでもないものが飛び込んでくる。

「っ、あ、気持ちい……っ」
「か、翔さん……!」

 翔さんは脚を大きく開き自分で乳首と中心を弄っていた。それが見た目は私の体なのだからとんでもない。トロンとした目を見て、私はいつもエッチしてる時あんなはしたない顔をしているのかと穴を掘って埋まりたくなった。もう二度と出て来たくないくらいに恥ずかしい。
 翔さんは自分の指を舐めて乳首に唾液を塗り付ける。中心を弄る指はもう二本中に埋め込まれていて、液体がトロトロと溢れてくるのが見える。翔さんは挑発するように私を見た。
 思わず喉を鳴らす。ゴクンと敏感になった聴覚に響いて、じっとその姿を見てしまう。翔さんの足がガクガクと震えていて、イキそうなんだと分かった。自分の体のことは、よく分かるんだ。

「あっ、ああ、イく……っ、」

 私の体が跳ねる。自分で触った時。翔さんに触れられている時。その快感が頭の中に蘇る。翔さんはトロンとした目で私を見ていた。気持ちいいの、知ってる。

「すずちゃん」
「っ、」
「おいで」

 翔さんが大きく足を開く。恥ずかしいのに見てしまう。私の体なのに。イッたばかりのそこはトロトロと蜜が溢れてヒクヒクと痙攣していて。

「挿れてみよっか」

 翔さんがそこを開いてペロリと舌舐めずりをする。本当はこんなことをしている場合じゃないのに。ゴクリと息を呑んだ。
 まるで見えない何かに引っ張られるように、私は翔さんに覆い被さった。

「っ、かける、さ」
「平気。ほら、」

 翔さんが自身を握って、中心に導く。先端が触れた瞬間、そこは呑み込むように動いて繋がった。熱くて気持ちよくて、腰が震える。体内を進む度、中が絡みついてきて。

「あっ、あ……」
「んんっ、すずちゃん、気持ちい……」

 翔さんは目を瞑って爪先をピンと伸ばす。気持ちいいの、分かる。いつも一つになる瞬間は翔さんに全部支配されるみたいな気持ちになって、全部呑み込みたくて、もっと、もっと、って。

「もっと……」

 翔さんの言葉に、頭の中がスパークしたみたいに真っ白になった。気が付けば翔さんの足を掴んでひたすら腰を振っていた。翔さんがいつもしてくれるみたいに余裕のある攻め方じゃない。ただ、ひたすら。獣みたいに腰を振った。気持ち良くて止まらない。

「すずちゃん、気持ちい?」

 翔さんが頬に触れる。いつもみたいに甘く優しい眼差しで。……大好き。大好き、翔さん。
 交わるみたいにキスをして。手を握り合うと、中がきゅんと狭くなった。一気に持って行かれる。

「か、けるさ、イキそ……」
「うん、俺も……」

 搾り出すみたいにキツくキツく締められて。下半身が熱くてたまらない。息が出来ない。私たちはキスをしながら、同時に果てた。

「はぁ、はぁ……」

 ドクン、ドクンと体内で何かが震える。ハッとして目を開けたら翔さんが目の前にいた。戻った……

「翔さん……」

 戻ったことに気付いた翔さんが微笑む。ああ、やっぱり翔さんは翔さんがいい。中にあったそれがまた硬くなっていく。大きく足を開かされて、またすぐに動きが再開される。

「女の子って気持ちいいんだね」
「んっ、あ……」
「すずちゃんをあんなに気持ち良くさせられてるなら安心した」
「か、けるさんは……、きもちよく、ない?」
「……気持ちいーよ、死んでもいいと思うほど」

 翔さんは妖しいほどに美しい微笑みを見せて、私を攻め立てた。

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