「何か好きなもの選んで」
「えっ、いいんですか!」
「30秒以内ね。はいよーい、スタート」
「えええ」
コンビニに入るとチワワは一目散にアイスのところに走って行った。やっぱ速ぇなチワワ。俺もアイスのところに向かう。なぜコンビニに来たかったかと言うと。
「お、あった。これまだ食べてないんだよなー」
新発売のアイスをまだ食べていないから。ずっと楽しみにしてたんだよなー。
「先輩アイス好きなんですか」
「なんなら三食アイスでもいい」
「えっ、今三食菜月でもいいって言いましたか?!」
「どんな耳してたらそういう風に聞こえるのか不思議だわ」
俺はチワワを置いてレジに向かう。トコトコとチワワが着いてくるのが聞こえた。
「私これで!」
チワワがレジで置いたのは俺の好きなアイスベスト3に入るアイスだった。…なかなかいい趣味してんじゃねーか。
お金を払ってコンビニを出ると近くにあった公園に入った。アイスを歩きながら食べるなんてありえない。ちゃんと座って味わわないと。
ベンチに座るとチワワも隣に座った。俺はゆっくりとアイスを味わう。ふとチワワを見ると、アイスを眺めてうっとりしていた。
「……食べないの」
「先輩に買ってもらったアイス、食べるのもったいなくて…」
……めんどくせ。俺はチワワからアイスを取り上げるとビリビリと包装を破った。
「あああああ」
「……別に」
そしてアイスを取り出して渡す。チワワはまたウルウルしながらそれを受け取った。
「アイスぐらいいつでも買ってやるから食べて」
「ほ、ほんとですか……!」
「アイス無駄にする奴は嫌い」
「いただきます!」
チワワはすごい勢いでアイスを食べ出した。素直なのかバカなのか。わからないけど。アイスを美味しそうに食べる横顔は、ちょっとだけ可愛いと思った。
「帰ろっか」
「はいっ!」
公園を出て家に着くまでチワワはぴったりと俺にくっついて歩いていた。どうしたんだろうと思っていたら後ろから足音が聞こえてきた。……ほんっと、めんどくさいな。
「チワワ、家に入ったらすぐ鍵かけて誰が来ても開けんなよ」
「は、はいっ!」
「で、それでも何かあったら俺に電話」
「何もなくてもかけますね!」
「……」
家に着くと、チワワはなかなか入ろうとしなかった。
「……何」
「キスしてくれないと眠れません」
「めんどくせ。いいから早く入って」
「はいっ!」
チワワは名残惜しそうに俺をチラチラ見ながら玄関を開けた。……そして。
「先輩、今日はありがとうございました!」
「……別に」
俺を振り返って言った。
「明日も明後日もずっと大好きです!」
「はいはい」
ニコッと笑った顔が見えた後、ドアが閉まった。鍵のかかる音を聞き届けてやっと、俺は来た道を戻った。