面倒ごとと無意識02

「ポスターか、面倒だね」
「うん……」

 担任からポスターの紙などを受け取り、教室に戻る。この雰囲気のまま放課後二人でポスター作るのか。そう思うと一気に憂鬱になる。

「三上さん、忙しかったら俺一人でやるけど」
「えっ」

 傷付いたような顔で、三上さんは俺を見てすぐに目を逸らす。正直な話、これは拒絶だ。きっと三上さんも気付いている。……でも、俺は。俺は……

「せんぱぁぁぁっぁい!!」
「……ゲ」

 気まずい空気の俺たちに突然割り込んできた声。この声は最近よく聞いているからすぐに分かる。隠れる場所を探したけれど近くに空き教室もなくどうしようもない。しかも、多分手遅れだ。
 ドスンと後ろから体当たりされて変な声が出た。所詮チワワだからそんなにダメージはないけれど、やっぱり痛いものは痛い。

「ちょ、突進してくるのはやめて」
「ということは、抱きつくのはいいということですか!」
「プラス思考すぎて清々しいね」

 チワワは俺の背中にへばりついたままスーハーと匂いを嗅いでいる。あまりいい気はしない上にたまにぐへへなんて気持ち悪い笑い方をするものだからげんなりする。このままにしておくか、それとも無理やり離すか。考えた上で無理やり離したほうが面倒なことになりそうだと判断して諦めた。

「……あの」

 あ、三上さんの存在忘れてた。

「山瀬くん嫌がってるよ。離れたほうがいいんじゃない?」

 そこでようやく三上さんの存在に気付いたらしいチワワがハッとして俺と三上さんを交互に見た。

「先輩浮気いいいい」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる。俺彼女いないから」
「わ、私のことは遊びだったんですね!」
「はぁ?……って、オイ!」

 チワワは目にいっぱい涙を溜めて走り出した。この一瞬で泣けるってすごいな。
 俺は思わず後を追いかけた。後ろから俺を呼ぶ三上さんの声になど気付きもせず。
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