お兄ちゃんの秘密

 私には兄がいる。兄と言っても血は繋がっていない。小学校6年生の時に親の再婚でできた義兄だ。4つ上の兄はそれはもう見目麗しく、穏やかで優しい。私はすぐに兄に夢中になった。初恋だった。
 でも兄はその見目麗しさを充分に活用していた。中学生の頃から変な声が兄の部屋から聞こえてきた。はじめは誰かと喧嘩しているのかと思ったけれど、そのうち兄の部屋で何が行われているのか分かるようになった。耳年増なマセた友達が言っていたから。ショックを受けた。兄がそんなことをしていたからではない。兄が女の人に触れていることに、私は途轍もないショックを受けたのだ。
 兄は大学を卒業すると家を出て会社の近くのマンションで一人暮らしをするようになった。もうあの変な声を聞かなくていいと思うとホッとした。
 兄は相変わらず私に優しかった。誕生日とクリスマスのプレゼントは必ず用意してくれたし、二人で食事に行った。胸の中に秘めておかなければならないはずの恋心は隠しておけないほどに大きくなり、私を犯罪行為に走らせようとしている。

「よし、犯そう」

 そう、私は二十歳を迎える誕生日の今日、兄を犯すことに決めた。処女だけど。

***

「みぃちゃん」

 待ち合わせ場所に現れた兄は今日も見目麗しい。高そうなスーツに身を包み、柔らかそうな髪はすっきりまとめられ、綺麗なパッチリ二重の目は嬉しそうに細められている。

「待った?ナンパされなかった?やっぱり心配だから家に迎えに行けばよかった」
「平気。もう今日から二十歳なんだから」

 そう言いながら兄を上から下までじっくりと眺める。兄妹になった時、兄はもう高校生で私は小学校6年生だったから、一緒にお風呂に入った思い出はない。兄は私の前で上半身裸にもならなかったから、私は兄の裸を見たことがない。この高級なスーツの下にどんな光景が広がっているのかと思うとよだれが出そうである。

「今日、本当に僕の家でよかったの?いつものレストラン予約したのに」
「久しぶりにお兄ちゃんの作ってくれたご飯食べたくて。仕事で疲れてるのにごめんね」
「全然大丈夫。みぃちゃんのためなら疲れてるなんて関係ないよ」
「嬉しい」

 優しく微笑むお兄ちゃんの腕に抱きつく。人よりちょっと成長したおっぱいを押し付けるのは昔からやっているけれど、全く効果がないので落ち込む原因である。やめないけど。
 お兄ちゃんは私をとても優しく愛おしげに見る。この顔を見る度に、嬉しくてくすぐったい気持ちと、私は女として意識してもらえないのだと再認識して悲しくなる気持ちが胸を襲う。

「今日はみぃちゃんの大好きなグラタン作るね!」
「うん!ねぇ、お兄ちゃん。今日泊まっていい?」
「もちろんいいよ」

 はぁ、とうとう今日私はお兄ちゃんと一つになれるのね。嬉しい。
 私たちは腕を組んでお兄ちゃんのマンションへと向かった。

***

「お邪魔します」
「どうぞ」

 お兄ちゃんのマンションはお兄ちゃんの匂いがする。さりげなく女の気配がないか調べるけれど、特に女物の何かはなかった。少し安心して遠慮なく部屋に入る。
 お兄ちゃんの部屋はあまり物がなくさっぱりしている。寝室をチラリと見る。私が泊まる時はいつも、お兄ちゃんのベッドを貸してくれてお兄ちゃんはリビングに布団を敷いて寝る。一緒に寝たいと言っても絶対に寝てくれないのだ。いつも優しく宥められて終わり。でも、今日は。

「ご飯作ってる間にお風呂入ってきたら?」
「うん、お風呂借りるね。ちょっとゆっくりしてくる」

 今日は体の隅から隅まで、綺麗に洗わないといけないから。
 そして体の隅々まで綺麗に洗い、無駄毛もチェックしてお風呂から上がる。リビングに戻るとテーブルの上には豪華な食事が並んでいた。

「うわ、すごい!」
「みぃちゃんの二十歳の誕生日だから頑張っちゃった」

 私の大好きなグラタンはもちろん、ケーキも、そして高そうなワインも。目を輝かせる私を愛おしげに見つめるお兄ちゃんの瞳は「兄」のものだ。

「食べよっか」
「うん!」

 乾杯をして、はじめてお酒を口に含む。正直あまり美味しいとは思えなかったけれど、子どもだと思われたくなくて美味しいフリをする。

「ジュースにする?」
「う、ううん!全然大丈夫!」

 私、もしかしてめちゃくちゃお酒弱いのでは?身体が熱くなって、頭がフワフワする。今日は酔っ払っちゃダメなのに。今日は……

「みぃちゃん、お誕生日おめでとう」

 お兄ちゃんの声が遠くに聞こえた。最後に見えたのはいつもの優しい笑顔じゃなかった。綺麗な唇の端が歪んでいた。


 ピチャピチャと水音がして、少しだけ意識が浮上する。眠くて仕方ないのだけれど、おっぱいと、下半身がムズムズする。あれ、私この感覚知ってる……?

「ん……」
「あ、起きた?みぃちゃん」

 お兄ちゃんの声がして目を開ける。眠い……。まだお酒を飲んだ時みたいに、頭がフワフワしてる。

「やっと二十歳になったね。嬉しい。今まで我慢するの辛かった。ようやく、みぃちゃんの中に僕の精子いーっぱい出せるね」
「え……?」

 お兄ちゃんが何を言っているのか分からなかった。素っ裸の私の脚の間にいるお兄ちゃんは嬉しそうに笑っている。

「ほら、聞こえる?僕に舐められてめちゃくちゃ濡れてるよ」

 お兄ちゃんの長い指がそこに触れる。くちゅ、といやらしい音が耳に届くと同時、身体に電流が走ったみたいな快感。

「っ、あああっ!」
「可愛い声。いっぱいイッてね」

 どうしてこんなことになっているのか分からなくて頭の中ははてなマークがいっぱいなのに、身体は強制的に絶頂に押し上げられる。何度も何度も、想像して自慰をしたお兄ちゃんの指。それが今、私のクリトリスをくちゅくちゅといやらしい音を立てて愛撫している。再認識すると、震えるほどの興奮が私を襲った。

「っ、あっ、あっ、お兄ちゃん、気持ちいい、あっ」
「みぃちゃんの気持ちいいところは僕が一番知ってるからね。ほら、イッて……?」
「っ、あっ、んんっ、イく、イく……っ!」

 一気に昇り詰めて、そして強張っていた全身の筋肉が弛緩した。はー、はー、と甘い息を吐いて絶頂の余韻に浸る。お兄ちゃんは嬉しそうに私を見下ろしていた。

「みぃちゃん、やっとみぃちゃんの全部を僕のものにできるね」
「え……?」
「ずっと好きだったんだ。初めて会った時から」
「う、うそ……」
「ほんと。だから、こうやって触れられるのが嬉しい……」

 私はずっと、お兄ちゃんに女として意識されていないと思っていた。だから今日、無理にでも抱いてもらってもうこの気持ちは消そうと思っていたのに、まさか叶うなんて……。

「お兄ちゃん、私もお兄ちゃんのこと好き」
「知ってる。みぃちゃんの僕を見る目、大好きって言ってるようなものだったよ」
「そうなの?」

 バレていたのが恥ずかしくて赤面する。そんな私に「可愛い」と言ってお兄ちゃんはキスをくれた。

「みぃちゃん、もう挿れていい?我慢できない……」
「う、うん。でも私初めてで……」

 処女なのにお兄ちゃんを襲おうなんて、本当に大それたことを考えていた。
 お兄ちゃんが服を脱いでいく。綺麗に筋肉のついた身体に見惚れる。そして下も全て脱いだお兄ちゃんを見て、思わず腰が引けた。

「わ、私初めてなの。だからそんなに大きいの……」
「大丈夫、みぃちゃん初めてじゃないよ」
「えっ」

 私の腰を掴んで、お兄ちゃんが生のそれを充てがう。初めてじゃないってどういうこと?しかも、それをどうしてお兄ちゃんが知ってるの?

「あっ……!」

 ぐっと腰を進められると、圧迫感が襲う。なのに、初めて特有の痛みがない。いや、初めては一回しかないのだからそれを経験していないはずの私にとって「初めては痛い」というのは聞いた話なんだけど。
 お兄ちゃんは躊躇なく最奥までそれを埋めた。私は快感にハクハクと唇を震わせることしかできない。なんで?どうして?私、初めてじゃないの?

「あっ、はぁ、あン、」

 一番奥まで来たそれはそこに留まったまま動かない。そのせいで中にお兄ちゃんがいることを、そしてその形まで、刻まれるみたいに感じさせられる。

「うっ、はぁ、」
「気持ちいいね、みぃちゃん。みぃちゃんの中、僕の形になってるでしょ?」

 まさか。まさかまさかまさか。私が今日しようとしていたことを、お兄ちゃんは私の知らないうちにしていたの?いや、まさかそんな。気付かないことなんてある?

「はー、今まで中に出せなくて辛かった。さすがに中に出すと僕の精子が垂れてきちゃって気付くでしょ?だから、二十歳になって正式にみぃちゃんを抱くまでは中に出さないって決めてたんだ」
「あっ、お兄ちゃん、待って、あっ、あっ」

 混乱する私を華麗にスルーして、お兄ちゃんは何度も腰を打ち付ける。確かに私の中は奥を突くお兄ちゃんのそれに嬉しそうに絡み付いて離れない。お兄ちゃんはうっとりした顔で私を見つめている。

「い、いつから、はじめて、いつ?」
「みぃちゃん生理来たのいつだった?」
「中一の、春……?」
「あれ、生理じゃないよ」

 お兄ちゃんがにっこりと笑う。中一の春、朝起きた時にパンツに血がついていたから生理が来たと思った。確かにあの日、股に違和感を感じたけれど生理が始まったからだと思っていた。それからしばらく生理が来なかったのも、初潮の後は不安定なこともあると思っていたから。

「うそ、わたし、全然、」
「本当にみぃちゃんは可愛いね。寝ながら何度も僕に犯されてるのに、全然気付かないんだから」
「で、でも女の人家に連れ込んで、えっちなことしてたでしょ?」
「してない。僕の初めてもみぃちゃんだし、他の女の子じゃ勃たないよ」
「で、でも声……」
「ああ、聞こえてた?みぃちゃんとえっちした時の動画見てたんだ。もしかして自分の声だって気付かなかったの?」

 気付かない。だって、自分は処女だと思っていたし、あんなに甘ったるい声が自分から出るだなんて知らなかったんだから。

「う、うそ、わたし、」
「みぃちゃん、この日のためにピル飲んでくれてありがとう」

 ピルを飲むように勧めたのもお兄ちゃんだ。私は確かに生理不順で生理痛も酷いから、純粋に心配してくれたのだと思っていたのに。

「っ、や、」
「みぃちゃん?」
「ひどい、お兄ちゃん、そんなの酷い、やだぁ」

 自分の知らないところでそんなことをされていたなんて、ショックだった。お兄ちゃんが自分に好意を持ってくれていることも初めて知ったのに。

「どうして、なんで、」
「みぃちゃん……」
「どうして私の知らないところで、そんなことするの、私、ずっとお兄ちゃんが好きだったのに、」
「ごめん……」

 お兄ちゃんは私の中からそれを抜いた。そして泣きじゃくる私の隣に座って頭を撫でてくれる。

「みぃちゃんのこと、好きで好きで仕方なかったんだ。触れたいけど妹だしできなくて、寝てるみぃちゃんの顔を見てると好きな気持ちを抑えられなくなって、それで……。でも、気持ち悪いよね、本当にごめん」
「……」
「僕、もうみぃちゃんに触らない。みぃちゃんが嫌がるなら、もう二度と会わない。兄妹で仲良くして欲しいって言ってた両親には申し訳ないけど、僕がしでかしたことだし。本当にごめんね。家まで送るよ」

 ベッドが軋む。お兄ちゃんが立ち上がる。私は思わず、お兄ちゃんの手を掴んでいた。

「みぃちゃん?」
「言って、くれたらよかったのに」
「え?」
「私もお兄ちゃんのこと好きなんだから、好きだって言ってくれたらそんなことしなくても初めから受け入れたのに」
「ごめん……。振られるのが怖かったんだ」

 さっき、お兄ちゃんは私の気持ちを知っていたと言った。振られないことを分かっていたはずだ。でも、私はその矛盾に気付かなかった。起き上がり、お兄ちゃんに抱きつく。

「ごめんなさい、お兄ちゃんの気持ちに気付かなくて」
「みぃちゃん……」
「離れたくない。これからはちゃんとお兄ちゃんのこと受け入れるから、もう寝てる時にはしないでね……?」
「うん、もう絶対にしない。ありがとう、みぃちゃん……」

 ぎゅうっと抱き合って、見つめ合うと、どちらからともなく唇を合わせる。触れるだけのキスを何度か繰り返した後、肉厚な舌が口内に入ってきた。歯列をなぞり、ねっとりと私の舌を愛撫する。

「はぁ、はぁ……」
「みぃちゃん、続きしていい?」
「うん……」

 お兄ちゃんは寝転んだ私のそこに触れ、まだ濡れていることを確認してからお兄ちゃん自身を充てがった。お兄ちゃんのそれはお腹につきそうなほど勃って大きくなっていて、そんなに大きいのが今まで知らないうちに何度も入っていたのかと思うとちょっとだけ怖くなった。
 ぬちゅ、といやらしい音がしてお兄ちゃんが私の中に入ってくる。はっ、はっ、と荒い呼吸を繰り返しながら圧迫感に耐えていると、身体を倒したお兄ちゃんがまた唇を重ねてきた。

「んっ、んむ、んんんっ」
「んっ、はー、夢みたい。みぃちゃんに受け入れてもらえるなんて……」

 お兄ちゃん自身に私の中がまとわりつくのが自分でも分かる。それにしても、こんなに気持ちいいのに今まで起きられなかったのはどういうことだろう……。

「みぃちゃん、ごめん、興奮しすぎてもうイきそう……」
「ん、きて……?」
「っ、はー、可愛い……」

 べろべろと口の中を舐められて、一番奥までゴツゴツ突かれて、私は何度も甘イキする。私の中ははしたないほどにお兄ちゃんに絡み付いて、子宮がキュンキュンと疼く。パン、パン、と激しく肌がぶつかる音が部屋に響く。

「っ、イく……!」

 どちゅ、どちゅ、どちゅ、今までにないほど奥まで激しく突かれて、お兄ちゃんの腰が止まった。同時にびゅるびゅる、と熱いのが奥で放たれて、私の中はそれを嬉しそうに飲み込んだ。

「はー、みぃちゃんの中、僕の精液美味しそうに飲み込んでるね……」

 唇をくっつけたまま、お兄ちゃんは恍惚とした表情で囁く。長い長い射精はまだ終わらず、私の中でお兄ちゃんのそれはまだ震えていた。

「みぃちゃん、愛してる。これからもずーっと僕のそばにいてね」

 ずっと片想いしていたお兄ちゃんからそんな風に言われて、たまらなく幸せに感じる。疲れて眠気が襲ってきた私の頭をお兄ちゃんが撫でてくれた。

「安心しておやすみ」

 お兄ちゃんがにっこりと微笑む。眠気に勝てず、私はそのまま目を瞑った。


「可愛いみぃちゃん。全部全部、僕だけのものだからね……」

 お兄ちゃんが囁く声は、私には全く届いていなかった。


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