どっちが
と、思ったけど最悪だった。下品な下ネタ、私を見下す発言、三木村さんへのパワハラ。大御所ぶってるけど名前知らないし。キモ。
「ねえ、博也くん。いい加減連絡先教えてよ」
三木村さんの隣に座っているのはテレビで見たことのあるモデルさん。三木村さんの腕に胸を押し付けている。三木村さんはとっても嫌そうな顔で払い除けた。
「触らないで、名前で呼ばないで」
聞いたこともない冷たい声でそう言って、三木村さんはお酒を煽った。そう言えば三木村さんがあんなにお酒飲んだところ初めて見たかも。なんて呑気に眺めていたら、モデルさんがキッと私を睨んだ。
「もしかしてこんな地味な子がタイプなの?」
地味ですけど何か。
「どうせミーハーな博也くんファンでしょ。ファンだからってプライベートまでストーカーしていいと思ってんの?」
元からお気に入りのバーだよ、場末だけど。お酒を煽る。あれ、これ結構度数高いやつかな。フラフラする。
「あんたみたいな地味女が本気で博也くんに相手にされるわけないんだから!仕事もどうせ碌なことしてないんでしょ」
「お前いい加減に、」
「私の仕事がどうとかあなたに関係なくない?私は仕事してる自分が好きだし誇りも持ってる。確かに私みたいなお子様体型じゃあなたの仕事はできないけど、あなたみたいな頭の悪さじゃ私の仕事はできない。みんな違ってみんないい。それじゃだめなの?」
三木村さんが何か言いかけたのを遮って言う。あれ、もしかして私酔ってる?
「それにどっちかと言うと、私より三木村さんがふがっ」
私にメロメロなんだよ。そう言いかけた私の口を大きな手が塞ぐ。なんかめちゃくちゃいい匂いする。斜め後ろを見たら芦屋くんがいた。
「はい、そこまで。すみませんけど、うちはこう見えても場末のバーなんで」
どこからどう見ても場末だよ。
「一般人の地味女を馬鹿にするような高尚な人間には合わない店だと思います。お引き取りください」
「はあ?!お前、俺が誰だか分かってんのかよ!」
「知らないっす。お前知ってる?」
突然振られて慌てて首を横に振る。だってほんとに名前知らないもん。顔は見たことあるけどね。
「お前酒弱ぇくせに飲み過ぎなんだよ。トイレ連行」
口を塞がれたまま引きずられる。あれ、確かに頭が回る……。
「あんたも、今日は飲み過ぎじゃない?」
芦屋くんがそう言ったのを最後に、目の前が真っ暗になった。