隠し事

 カシャ、と小さい音がして目を覚ます。うっすらと目を開けると、三木村さんの背中が見えた。そっと手を伸ばし、背中に触れる。何故かビクッとして、三木村さんは何かを隠した。

「な、奈子ちゃん起きた?」
「うん。何隠したの?」
「何でもないよ。ね、痛いところない?」

 そういえば、洗面所からベッドに移動している。私が意識を飛ばしている間に運んでくれたのだろう。体もしっかり綺麗にして。

「大丈夫。ね、何隠したの?」
「何でもないよー。それよりもさ、フルーツ食べない?さっき頼んだんだ。奈子ちゃんお腹空いてるでしょ?」

 三木村さんがテーブルからお皿を持ってくる。色々な種類の果物が綺麗に盛り付けてあって、いちご食べたい、と言えば三木村さんが口元に持ってきてくれた。

「はい、あーんして」
「あーん」
「あー、雛に餌あげるお母さん鳥ってこんな気持ちなのかな。溢れ出る母性」
「次はぶどうがいいな」
「オッケー!」

 三木村さんは私のお世話をするのが楽しくて仕方ないみたいなので、存分に甘える。動くの辛いし。動くのが辛いのが何故かと言うと、それは完全に三木村さんが原因だし。

「私もしてみたいなぁ」
「えっ。何を?」
「三木村さんをいーっぱいイかせて、動けない三木村さんのお世話してみたい!」
「……。奈子ちゃんってさぁ、たまに心にちんこ生えるよね」
「ん?」
「たまに男前になるってこと!奈子ちゃんにいーっぱい責められるのもいいけど、今日は俺がいーっぱい奈子ちゃんイかせる番ね」

 フルーツのお皿に乗っていた生クリームを、長い指で掬う。そして綺麗な顔を意地悪に歪ませた。

「今度はこれ使ってみよ。奈子ちゃんと生クリーム、どっちが甘いかなぁ」

 糖度で言えば絶対的に生クリームである。試さなくても分かる。

「奈子ちゃん、大好きだよ」

 そう言って甘いキスをされてしまえば、全てがどうでもよくなってしまう。疲れ切った身体も、さっき三木村さんが隠した私の寝顔を盗撮したであろうスマホも。誤魔化されてるなぁ。そう思いながらも、甘い刺激に身を委ねるのだった。


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