抗えない02

 飲み会では最近優しくなったと噂の彰くんに女子が群がっていた。昨日までの私ならあそこに仲間入りしていたかもしれないけれど、彰くんの本性を知ってしまった私はアンチ彰くんになった。
 アンチ彰くんという子も大学には少なからず存在していて、何もしていないのに女子にあんな態度を取るのは失礼だとか顔がいいからって調子に乗っているとか色々言っているけれど、結局間近で彰くんを見た子は彰くんファンにすぐさま転身するからアンチなんていないに等しい。
 結局みんな彰くんの目に映りたいのだ。映してくれないことにヤキモキして、ひねくれた態度を取ってしまうだけなのだ。私は違うけど。

「あれ、山城さんはあそこに入らないの?」

 1人離れて飲んでいると世良くんが声をかけてきた。面白そうに私と彰くん集団を交互に見ている。私はそれにもちょっと腹が立って吐き捨てるように答えた。

「ああ、私アンチだから」
「ぷはっ」

 笑ったな?!世良くんも大学に入った頃からの彰くんの親友だから女の子の心理を理解しているらしい。でも私は違うの!

「ほんとに!ほんとだから!」
「何かあった?」
「あっ……!たような、なかったような」

 本当はとんでもない大事件が起きたのだけれど、それはさすがに言えない。彰くんと成り行きとはいえエッチしたなんて、女子に知られたら大変なことが起こる。明日のニュースで遺体の名前「山城 未来香」と紹介されそうだ。いや、冗談でなく。
 それに軽い女だと自分で言いふらしているようなものだし。絶対言えない。

「何それ。でも最近彰変だよな」
「えっ」

 世良くんも思ってたんだ。そりゃあ思うか。今まで女子と目を合わすことすら嫌がっていたような男の子が女子に笑顔を向けるようになったんだもんね。近くにいる世良くんなら更に思うか。
 野獣のような目をしている女子の真ん中にいる彰くんはとっても嫌そうな顔をしている。心なしか顔色も悪い。あれれ、今日は前と同じ彰くん……?

「ねぇ、彰くんってさ……」
「僕が、何?」
「ひっ!」

 今の今まで遠くにいた彰くんがいつの間にかすぐ後ろにいた。耳元で囁かれゾクゾクと背筋が粟立つ。膝から崩れ落ちそうになる私の腰を彰くんのたくましい腕が抱き留めた。

「え?僕?」

 世良くんが不思議そうな声を出す。彰くんは私を見てニコニコしている。何なのほんとそのギャップ……

「未来香ー!何彰くんに腰抱かれてんだー!!」

 飯田が鬼の形相で叫んだ。ヤバい殺される。

「未来香……『未来香』か、いい名前」

 目の前で微笑んだ彰くんにまたしても違和感を覚えたけれど、結局私もアンチから彰くんファンに華麗に転身してしまった。

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