抗えない01

 体を合わせた後、相手に何故か驚愕されてすぐさま逃げるように去って行かれるというのはなかなかショックなものだ。あの後しばらく放心状態で動けなかった私は必死で理由を考えた。でも彰くんの頭の中なんて分かるはずもなく、湧き上がってきたのは怒りだった。誘ってきたのは向こうなのに、ノリノリだったのに……!
 でもよく考えれば最中にも不可解なことはたくさんあって、最低とも取れる発言だってあったし、彰くんはみんながイメージしているような硬派な人じゃなかったのかもしれない。一回セックスしたくらいで調子に乗んじゃねー的なことを言うのかもしれない。やっぱり最低だ……!

「……」
「……」

 そんなことをひたすら考えていたら、次の日教室でバッタリ会った。いやバッタリってわけじゃない。同じ授業をたくさん取っているのは専攻が同じなのだからおかしなことじゃない。彰くんはやっぱり私を無視した。いつもみたいに、ナイフみたいな尖った雰囲気を醸し出して。そのナイフがいつもより尖っている気がするのはあんなに甘い彰くんを見た反動か。
 ふーんだ、知らないもんね。あんな最低な男、こっちから願い下げだ。悪い女にハマって痛い目見ればいい。

「山城さーん、おはよ」
「おはよ、世良くん」

 世良くんはお茶目で明るいうちのゼミのムードメーカーだ。あの彰くんですら心を許しているらしい。世良くんと仲良く話しているのを多々見る。まぁ、彰くんが冷たいのは女の子にだけだけど。

「今日ゼミのみんなで飲みに行こうって言ってるんだけど山城さんも来ない?」
「うーん、行こうかな」
「よっしゃ!じゃあ飯田さんにも言っといて」
「りょうかーい」

 飯田とは昨日彰くんとエッチした夢を見たと言い出した親友のことだ。まさか彼女が見た夢が自分の身に降りかかるとは思っていなかったが。今となっては消したい過去になりつつある。
 軽い女と軽蔑したのだろうか。いやでもそれを言うなら彰くんだって軽い男だ。いやいやもう考えるのはやめよう。私ばっかり気にするのは不公平だ。

「おっはよー」
「あ、お、おはよう」

 親友が来て隣に座った。何だか気まずい。
 チラッと彰くんを見てみると世良くんと楽しそうに話していた。爽やかな笑顔が腹立たしい。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -