そばにいること

 部屋に入るなり抱き締めてキスをした。正直がっついていると思われたら嫌だ、なんて思っている余裕もない。二年前。目が覚めたら隣にいなかった彼女にまた会いたいと願っていた。そして、俺はまた見つけたんだ。無防備な彼女に触れたいと思うのは、当然のこと。夢中でキスしていたら、七瀬さんが俺の肩辺りの服をきゅっと握った。頭に血が昇る。

「……あまり煽らないで、七瀬さん」

 え、と七瀬さんが戸惑っているうちに横抱きにした。見た目通り軽い七瀬さんはキツく抱き締めたら折れてしまいそうだ。七瀬さんを抱いたまま自分の部屋に入る。自分の部屋に七瀬さんがいるのは何だか不思議な感じがした。

「待って、関くん、私、」
「もう待った、二年も」

 ベッドに下ろすと、真っ赤な顔をした七瀬さんが俺の胸を押す。でもその抵抗に本気で嫌な気持ちがないことは分かった。七瀬さんの、俺を見上げる瞳が潤んでいる。七瀬さんも俺と同じ気持ちだと、自惚れてしまうのは仕方ないことだ。

「……関くん」
「……」
「ごめんね」

 七瀬さんは悲しそうに微笑んで俺の頬に手を寄せた。……いいよ。七瀬さんは何度逃げようとしたって。それでも俺を好きでいてくれる限り、俺が何度でも追いかける。
 七瀬さんの服のボタンを外していく。気ばかり焦るけれど、怖がらせるのは嫌だから。七瀬さんの首筋に顔を埋めたら、とてもいい匂いがした。七瀬さんは香水をつけないから、シャンプーの匂いだろう。正直一緒の家に住んでいて近くを通る度にその香りがして劣情を我慢するのだ大変だった。
 七瀬さんの肌に触れる度、白い体がピクリと揺れる。はあ、と熱い息を吐いて俺は彼女の体にキスを落としていった。触れられることが嬉しくて仕方ない。俺の腕の中にまた七瀬さんがいることが、嬉しくて仕方ない。そんな思いを込めて、彼女の体に触れた。

「優しくする」
 
 それは決意と、自戒を込めた言葉だった。七瀬さんは緊張した面持ちで頷き、俺の首に手を回す。一つになった時、少し辛そうな七瀬さんを見て、申し訳ないと思いつつ嬉しかった。

「俺以外誰にも抱かれてないんだ」

 思わずそう言えば、七瀬さんは顔を真っ赤にして頷いた。……この腕の中の愛しい人を、心から大事にしたいと思う。そう思えることも嬉しくて、幸せで。額をくっつけて微笑み合って、キスをする。大切な人がそばにいてくれることに幸せを感じながら、俺たちは甘い夜を過ごした。
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