「唯香綺麗だよ、ほんと綺麗だよ」
「お姉ちゃん、泣きすぎだから」
鏡に映るのは、私の隣で泣きじゃくるお姉ちゃんの姿。私は全然泣いてないのに何でお姉ちゃんが泣くんだ。
「まさかこんな日が来るなんてね。ずーっとヤスくんのこと好きだったもんね」
お姉ちゃんには私の気持ちを言ったことはなかったんだけど。やっぱりバレていた。ヤスくんと付き合い始めたと報告した時には、
「あのロリコン親父、うちの大事な妹に……!」
と暴走していたからどうなるかと思ったけれど、今日は祝ってくれているようでよかった。
「向こうで待ってるからね」
「うん、ありがと」
立ち上がると、布が流れる音とハイヒールの音。しっかりと前を向いて、私は歩き出した。
一目惚れした式場、ヤスくんにここがいいと言ったらヤスくんはじゃあそうしようと微笑んだ。ヤスくんは優しくて、私の小さなわがままを全部笑って許してくれる。唯香がそうしたいならそうしよう、と。だから私も、ヤスくんにも私といることが幸せだと思って欲しくて、ヤスくんに優しくしたいと思う。
思えば子どもの頃から、私の全ての原動力はヤスくんだったのだ。
目の前の扉が開く。視線の先に大好きな人がいる。これは、私の人生を賭けた恋だった。誰も入り込む隙のない、人生でたった一つの恋。
これからも、私はきっとこの人に恋し続けるのだと思う。
「唯香」
彼が私を呼ぶ。それだけで、私は何でもできるような気さえするのだ。