バッドトリップ! | ナノ
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我ながら挙動不審だが仕方がない。私は商品を選ぶふりして棚の間に身を屈めた。なんせ家からほど近いスーパーだ。近所のおばちゃんに見られて「あらー麻央ちゃんが男の子の下着買ってたわよ!」なんて噂されたらたまったものではない。

「なにやってんだ」
「……なんでもないです。ねえ跡部、ホントにどんな柄でもいいの?」
「ああ。俺様に言わせりゃどれも等しく地味だ」

私は相変わらずな跡部の調子に、ため息をついた。恥ずかしい、落ち着かない、意味がわからない!なんで野郎のパンツなんか選ばにゃならんのだ。いや女の子のならいいってもんでもないけど。中学女子だってのに私はママか。いやメイドか、まったく。

コソコソと商品を物色しながら内心でぶちぶち文句を言っていると、ふと、目の前に「ソレ」が飛び込んできた。
思わず「ソレ」に手を伸ばしかけて、止め、跡部の様子を伺う。跡部はこちらの様子には気がつかず棚の端にできた褌コーナーを物珍しげに眺めている。
――よし。
私は「ソレ」をいくつか買い物カゴにいれてこっそりレジまで進むと、紙で包んでくれるように頼んだのだった。



紙の包みを抱えて跡部のところまで戻ると、もう買ったのかとでも言いたげに跡部が片眉を上げた。なんとか誤魔化そうと私が口を開いたとたん、跡部のスマホが鳴った。

『To:跡部景吾
From:斎藤幸人
Sub:お昼
倉本さんとの買い物はどうだい?資金は足りているだろうか。
僕は仕事が立て込んで夜中まで帰れそうにない。すまないが昼飯と夕飯は適当に食べておいてくれ』

お昼ご飯、か。私は返事を打っている跡部に尋ねた。

「跡部、なにか食べたいものはある?」

跡部はスマホを制服の尻ポケットにしまうと、目を瞬かせた。

「あ、ちょ、高級フレンチとかは無理だからね!?」
「まだ何も言ってねえ、というかそこまで求めねえよ!……倉本、お前のおすすめは?」

おすすめ、おすすめ……。フレンチとか寿司とか高級路線は資金的に無理だし、かといってお昼近くになってしまった今から家に帰って昼御飯を作るのは厳しい。手軽に食べられて、高くなくて、せっかくだから跡部に食べさせてみたいもの。
私はぽんと手を叩いて跡部に尋ねた。

「B級グルメはどう?」
「B級グルメ?」
「たこ焼きとか、食べたことある?」

首を横に振った跡部を見て、私はニンマリと笑った。


20141012

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