バッドトリップ! | ナノ
18

面倒なことになった、と内心苦い気持ちになる。しかしその感情を表に出したらもっと面倒なことになる!
私は努めて明るくパタパタと手を振った。

「あはは、まさか!ただの友達」
「だよねー、あのイケメンに倉本じゃ釣り合わないっていうか。アンタださいし」

彼女は可愛らしい顔に含み笑いを浮かべた。
私はニコニコと笑顔で頷いたが、内心はもちろんイラッとしている。しかし、キエエエエイほっとけ!と思う一方でその言葉は正しいとも思う。
確かにあの跡部と私じゃ全く釣り合っていなかった。私は可愛いくもなければ得意なことがあるわけでもない。

たまたま、神様のいたずらで跡部と知り合うことになっただけ。

「彼女いるのかな?紹介してよ」
「へ」
「彼氏じゃないならいいよね?」

言葉に詰まる。確かに彼氏じゃないけど、困った。どうしよう。正直、苦手なこの子と跡部は仲良くなってほしくない。でもそれは跡部が決めることだ。
救いを求めて試着室を見ると、タイミングよく元の制服に着替えた跡部が現れた。そのとたん、彼女は跡部の前に立ちはだかって、満面の笑みを浮かべ猫なで声で話しかけた。

「ん?」
「こんにちはぁ、麻央ちゃんの友人の雑賀内(さいがうち)ですぅ」

私はうつむいて顔を押さえた。完全に顔、ひきつってる。さっきまで苗字呼び捨てだったじゃねーの!怖いよホントにやめてくださいおまけに不愉快だし!

「そうなのか?」
「あのう、麻央ちゃんと仲いいんですか?お名前は?」

私は指の隙間からこわごわ二人の様子を伺った。こちらに背を向けている苦手な彼女――雑賀内さんはとても可愛い。ぱっちりした目にぷるつやの唇、艶やかなゆるふわロング。モテを体現したような女の子だ。跡部の外見の好みはよくわからないけど、これだけ可愛い子に迫られて嬉しくないはずがない。
私は跡部にジェスチャーで会計にいく旨を伝えると買い物カゴを抱え、二人からそっと離れてカウンターに向かった。

「シャツが二点、ジーンズが一点……」

まだ眠そうなお姉さんが次々とバーコードを読み取っていく。私は二人が気になったけど、仲良く話す様子を見たくなくてあえてカウンターを見つめた。

嫌だなあ。

そう思うが仕方がない。私には口出しする権利なんてないんだから。

「お釣りは1320円になります」
「はい、……あ」

のろのろとお釣りを受け取ったとたん、横からひょいと手が伸びてきて服の入った大きな袋を掴んだ。

「え、跡部?」
「跡部くん、待って。どこ?」

見れば雑賀内さんが追いかけてきている。が、跡部を見失ったのかきょろきょろとしている。跡部はもう一方の手で私の腕を掴んで囁いた。

「来い」
「え、ちょっと待って」
「早くしろ」

ぐいぐいと引っ張られて、跡部に導かれるまま走って、気がつけば時計台公園まで来ていた。


20140927

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