バッドトリップ! | ナノ
15

跡部と揉み合っているうちに、私は重大なことを忘れていることに気がついた。
今日は日曜日だ。つまり明日は月曜日。すなわち、学校が始まる。

「あああ!跡部、学校はどうするの!?全然準備してないよ!」

ノート類を買わねばならないし、制服や体操服だって用意しなければならない。
私はあわあわと焦ったが、跡部は冷静だった。

「戸籍を作成するのに時間がかかるそうだ。学校に行くのは1、2週間後からだな」
「なんだ、よかった。昨日の今日じゃさすがに準備が追い付かないよ」
「ああ。学校が始まるまでに生活基盤を整えて……『歪み』についても調べ始めるつもりだ」

跡部は窓の外に目をやって拳を握った。その口調は淡々としているのに、私の胸はぎゅっと締め付けられた。
早く帰りたいに違いない。でも、すぐには向こうへ帰れないと予想しているのだろう。だから長丁場になることを覚悟して、きちんと生活しながら帰る方法を探せるように、生活基盤を整えようとしているのだ。
……私だって跡部と同じで、この世界では異端の存在になってしまった。でも私には、跡部と違って、家族や友人がいる。
そんなことを考えているうちに、自然と言葉が口についた。

「ねえ、跡部」
「なんだ」
「私、たとえ何があったとしても最後まで跡部の側にいるから」

ぱっと振り返った跡部は目を丸くした。
私はそこまで言ってしまってから冷や汗をかいた。本心だったけれど、その、これはなんだプロポーズか?
しかし当の跡部はさして気にするでもなく、髪をかきあげてポーズを決めていた。

「フッ、仕方ねえな。お前を俺様のメス猫1号に認定してやる」
「いらんわ!なんだそりゃ!」
「アーン!?この俺様のだぞ、ありがたくねえのか!?」
「今は料理ができる男のがありがたいわ!」
「くっ」

私はばっと立ち上がると跡部に指を突きつけた。

「とにかく!今日の最重要ミッションは買い物と料理!それと跡部に庶民生活になじんでもらうこと!ビシバシいくからね」
「あ、ああ」
「まずは買い物にいこうよ。ご近所案内もかねて、さ」
「そうだな」

跡部はひとつ頷くと、いきなりジャージの上着を脱ぎ始めた。素肌に直接ジャージを着ていたらしく、鍛えられた上半身が露になる。
私は目の前で跡部の半裸を見て真っ赤になった。とっさにしゃがみこんで目をおおう。

「ぎゃーなにすんのよ!」
「アーン?着替えるだけだろうが」
「わかっとるわ!そうじゃなくて一言いってよ、着替えるなら私が向こう向いてからにしてよー!」
「メス猫1号にサービスだ」
「そんなサービスいりませんから!」

衣擦れの音か聞こえる。見なくても跡部がニヤニヤ笑っているのがわかった。
――またからかわれた!
私は目を塞ぎながらも、密かに復讐を誓った。


20140915

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