ネタ | ナノ

困惑柳生

「ブリーフとボクサーってどう違うの?」

柳生は麦茶を吹き出しそうになった。好きな女の前で紳士らしからぬ失態は見せられまいと根性で耐えきる。
コップを机に置いた柳生は、気を取り直して彼女に向き合った。そして返事に詰まる。そもそも、ブリーフだのボクサーだのという話題を振られた時点で紳士も何もあったものではないのではないか。こんな際どい話題に答えてよいものか。いや、彼女のことだから単なる好奇心で下ネタという意識もないに違いないが、しかし。
柳生は困惑した。マイペースな彼女らしいといえば彼女らしいが、なぜ突然、男性下着。

当の本人は柳生の内心を知ってか知らずか、頬杖をついてペンをくるくる弄びながら言葉を続けた。

「さすがにね、見た目が違うのはわかるのよ。ボクサーの方が男子にも人気あるんでしょ?」
「え、ええ、まあ」
「なんでだろ?見た目の問題?じゃあ黒のブリーフがあったら人気が出るのかな」
「……さ、さあ」
「色の違いだけじゃないのかなあ。履き心地が違うの?」
「それは、なんとも」
「うーん、真田ならわかるかな」
「ダメです!!」

空になったコップが倒れる。柳生は思わず大声を出して立ち上がる。彼女は目を丸くしてペンをぽとりと落とした。
柳生はコントロールできなかった自分に狼狽えた。こんな話を他の男にしてほしくない。だがその気持ちを素直に伝えるのは告白も同然だ。確かに真田なら妙な気を起こさず律儀に答えるかもしれないが、嫌なものは嫌だ。

「柳生?」
「すみません、その、真田くんはフンドシしか履かないと思いますし」

ヘンなことを口走った。適当に取り繕うつもりで言ってしまってから、柳生は更に汗をかいた。
だが彼女は素直に「そっかーそうだよね」と言うのみで、柳生は胸を撫で下ろす。

「ボクサーの方がピッタリしてるのかなあ。よく見たこともないからわからないし」

――まだ続くのですかこの話題は!
柳生は半ばヤケクソになった。

「すみません、お役に立てず。履き比べた経験がないものですから」
「そっかー。じゃあ柳生は普段……あっ」

彼女は真っ赤になった。とたんに気恥ずかしそうにもじもじし始め、怪訝な顔をする柳生に小声で言い訳をする。

「……あの、ごめんね。その、そんなプライベートな話を聞き出すつもりは、なくて」

柳生は呆気にとられ、それから急に可笑しくなった。今さら気がついたらしい。下ネタそのものより相手を気にするところは彼女らしい。
ようやく余裕を取り戻した柳生は、眼鏡を押し上げて微笑んだ。

「気にしていませんよ」
「でも」
「いいんです。貴女ですから」

彼女は大きく目を見開いてぽかんとしてから、真っ赤なまま机に突っ伏した。


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最後はいい感じに紳士っぽいのに、「貴女だから下着の話をしてもいいんです」って結局は変態紳士じゃry ……ごめん柳生。

2014/08/02 22:29
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