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バッドトリップ! #1

「う……」

固く目を閉じたまま低く呻いて、私は身を起こした。額に手をやって痛むそこを押さえる。頭がずきずきする。体も冷えきっていて節々が痛い。
微かにまぶたを持ち上げると、黒っぽい道路と白線、それに交差するように地面の上に伸びた自分の両足が見えた。どうやら地べたに座り込んでいるらしい。


なに、してたんだっけ。


まだぐらぐらする視界を右へ左へと移動させると、自分の学生バッグが逆さになって転がっているのが見えた。
そうだ、学校の帰りだった。

「なんで、私」

私は背中に手をやった。ブレザーの後ろに砂がたくさん付いている。どうやら地べたに寝ていたらしい。
もちろん、こんなところで寝る趣味はない。要するに、気絶していたということになる。

へんなの。私はそう思いながら痛む全身に力を込めて、道沿いのブロック塀に手をついてようやく立ち上がった。今まで気絶したことはない。貧血でもないし目眩も起こさない。体調も特に悪くなかったはずだ。それなのに、こんなこと。

私はのろのろと制服のスカートについた砂を払って、よいしょとバッグを持ち上げる。空を見上げればちょうど日が暮れ始めたころで、家々の隙間から見える空はオレンジ色に染まっている。幸い、気絶していた時間はさして長くないようだった。

「早く帰ろ」

母さんに怒られちゃう。自分に言い聞かせるように呟いて、私は相変わらず痛む頭を押さえながら歩き始めた。

そのとたん、柔らかいものを踏んで転びそうになった。

「わっ」

慌てて見下ろすと、踏んでしまったのはカーディガンの端。そしてそれは。

「え、え、え……」

人が、いた。
端正な顔立ちの男子が力なく倒れている。

助けなきゃ。助けて。あたりを見回して助けを大人を呼ぼうとするが、今日に限って誰もいない。車も通らない。


私がなんとかするしかない?

どうしよう。どうしよう、どうしよう。


後ずさった反動で痛む足が絡まって、私はその場にすわりこんでしまう。

「……そうだ、警察!」

こんなときに警察呼ばなくてどうする!
私は慌ててバッグから携帯を取り出すと、震える指で110番を押した。

2014/06/04 21:12
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