「カシム!」

それはいつもと変わらない帰り道で…けれど目の前を無言で進んで行く彼は振り返りもしない。
何がカシムを怒らせてしまったのかは分からない。
いつもそうだ、俺は自分で気付かない内にカシムの気に障るようなことを口にしてしまう。

「なあカシム、もし俺が悪いんなら」
「五月蝿ぇ」

謝るから、だから、
カシムの肩へと伸ばした手はけれど役目を果たすことなく振り払われた。

「カシ、」
「アリババ、お前はいつもそうだな」

どこか諦めたようなその声に体が震えた。

「お前のそういう所…嫌いだわ」

(ッ、)

一瞬世界が止まったような錯覚を起こした。
カシムから吐き出されたその言葉に驚く位胸が抉られる。

(やだ、な…カシムが怒ったのなんてこれが初めてじゃないのに)



だけど
嫌いっていうのは
初めて言われた



きしり、と脳の端で何かが軋んだ気がした。

「…アリババ?」

瞬間カシムの驚いたような声がしてどうしたのかと首を傾げる。すると首筋に何かが垂れてきて。

(え、なんだこれ)

それを拭う、と。
ああそっかと。

(俺なんで泣いてんだろ)

ばかみたいにぼろぼろと零れてくるソレを不思議に思う。


(挿絵)


止まらない涙をそのままにじっと静止していると、急に脳裏に浮かんできた景色に意識が引き摺られた。
ぼやけた映像の中、自身の傍らに佇むその人はただ笑っていて。

『アリババ』

顔は判別出来ないのに不思議とそれが誰かわかって。

『なぁ…アリババよ……』

隣で笑っているのに、反響する声は悲しくて。

『俺らさぁ…』

(、ぁ)




(挿絵)





ーきっと、きっとさ…俺たち二人はこうなるために産まれてきた訳じゃなくて。そうじゃなくて。

誰だって幸せになりたくて必死で生きていて。それでも立ちはだかる壁は厚くて大きくて…だからお前は。

でも、でもさ。
でもさカシム、確かに俺は恵まれて幸せだったのかもしれないけど。だけどその幸せってな、お前が傍にいたから得られたんだって…そういうのがたくさんあるんだって分かってる?
そんな面と向かって言ったことはないけどさ、俺はお前と…カシムと出逢えて幸せで。

あの時のこと、俺は仕方がなかっただなんて言わない。
もっと別の道があったはずなんだ。

だからこそ、なあカシム




(俺はお前と生きていきたかったよ)







(そっ、か…俺)

「アリババ?おい、」
「カシム」

きっとお前はばかだって笑うだろうけど、俺はお前に会いたくて…だから初めて願ったよ。初めて信じてもいない神さまに願ったんだ。

「カシム、ごめん」
「……」
「ごめん」
「…もう良い。俺も悪かった」

帰ろうぜと差し出された手を握り返す。伝わる温度にまた泣きたくなった。



(カシム、カシム)



俺の友だち。
大切な。


遊んで
話して
時々喧嘩して

俺さ、いますごく幸せなんだ。








もう悲しいおわりはいらないから。
きっと、絶対に。


(カシム、)
























(あなたと幸福の終わりを見るためにわたしはここにいるの)



(挿絵)





***



閲覧ありがとうございました!
画像をうっかり見てしまった方はすいません!何か画像の不必要さもひしひし感じるんですが文字通り見逃して下さい(笑)

カシアリは永遠ですと真顔で言っておきます。お互いがお互いを思い合って想い合える関係のなんと素晴らしきことか…正直涙が止まりませんね!カシアリ万歳!

話の内容分かり難くて申し訳ないです。最初に記載していたように転生もので、二人は過去を覚えてなかったんですが、アリババくんだけ途中で思い出しちゃったとかいうそんなアレです。本当分かり難くてわあああ。

あと最後の挿絵はあれですあの幼少期に取り合ってた旗です。これも分からなかった方すいません。そして内容の変更によって使わなかった挿絵を置いておきます→(挿絵)


とりあえずあの、ありがとうございました。カシアリ万歳(土下座)