※暴力表現有





















「ッい、ぎ…!」


骨の軋む音が聞こえる。ギシギシと痛む身体はもはや感覚すら遠くなってきて。冷たい床に転がされたまま動けないでいると、頭上から淡々とした声が降ってきた。


「やれやれ、君は本当に僕を困らせてくれるよね」
「ッあ、!」


髪を掴まれ無理矢理顔を上げさせられる。目の前にある冷えた黒い瞳に知らず背筋が震えた。


「何だっけ、ほら…もう一度言ってみなよ」


にこりと口角を上げつつも瞳の奥に潜む色は変わらない。その瞳に見詰められると刻み込まれた恐怖が湧き上がってくる。…けれど強く手を握り締め、床に倒れ伏した際に切れて血が滲んだ唇を開いた。


「あ、なたは…間違っています」
「何が?」
「、っ…奴隷の扱いも…そもそも奴隷なんてあるべきじゃな、です」


痛む唇を動かしそう告げる。
…先刻も部屋へと赴き同じようなことを意見した。すると僅かに笑んだこの人は、抵抗する暇も与えぬまま自身をこの部屋へと連れて来て思う様暴行を働いたのだ。覚悟をしていた事とはいえ、幼い頃より受けた仕打ちまでもが思い出され己が精神を追い詰めた。


「ねぇアリババ…君はいつからこの僕に意見出来るほど偉くなったんだい?」


奴隷の分際でさぁ…。
ギチリと髪を掴む手に力が篭められ痛みに呻く。それを面白そうに笑いながら見てくる相手の異常性に喉が引きつった。


「なに?震えてるけど」
「あ、…っ、」
「僕が怖い?」


その問いに答えられずにいると左の頬を殴られた。依然として髪は掴まれたままで、再び視界に映る主人の非情な表情に呼吸が苦しくなる。揺さぶられた脳は判断力を鈍らせ恐怖心ばかりを押し上げて。


「僕はこれでも君には優しくしてきたつもりなんだけど…躾が足りなかったかな」


ああ実に残念だよ。甘やかすだけじゃあ駄目だねやっぱり。
そう言い終わるか否かでもう一度頬を殴られた。嫌な音が口内で鈍く鳴り、奥歯の一部が欠けたようだ。ボタボタと口の端から流れ落ちる血液をぼんやり眺めていると、急に身体を引き倒された。冷たく固い床に強かに背中を打ち付け一瞬息が出来なくなる。しばし遅れてズキズキと身体が痛み出し、思考にモヤがかかってきた。


「ぅ…」
「アリババ、僕の名前を呼んでごらん」


まるで子どもに言い聞かせるみたいに囁いてくる相手。俺は自身につい今し方行われた事を一瞬間忘れ、無意識に口を開いていた。


「ジャ、ミル…さま」
「ああその通り。それがお前の主人の名だよ」

いい子だと頭を撫でてくる相手は笑顔を崩さぬまま再び口を開いた。


「奴隷身分のお前なんて、僕がいなければただのゴミでしかない…それをよく覚えておくことだ」


分かったね?と零れ落ちる音に涙が溢れてきた。どんなに叫ぼうがこの人に自分の声が届くことは無いのだろう。相手にとっては自分なぞ所詮賤しく穢らわしい奴隷でしかないのだから。


「あの日から君は僕の所有物なんだ。もう刃向かうなんて馬鹿なことはしないように、ね」

(約束しよう)
(君は一生、僕のモノ)







『決めた、この子にするよ』

『君の名前は?』

『僕はジャミル。今日から君は僕の奴隷だよ。よろしくね』



『おいで、アリババ』














…手折られた花はもう二度と戻りはしない。






***






ねあ様、この度は5000打企画にご参加下さりありがとうございました!

アリババくんが、ジャミルさんの奴隷だったら。可哀想なアリババくんが
すごくみたいです!!…との事でしたが、ご希望に果たしてこれで応えられているのか…おおおこんなので申し訳ないです!可哀想なアリババくんということでエロ入れるべきかどうか悩みましたが、今回は特にご指定も無かったので暴力表現のみに留まりヽ(^。^)丿

もう何だかアレな話ですみませんんんん苦情はいつでもどうぞ!(土下座)

それでは本当にありがとうございました!(*´▽`*)