(貴方の、)
(貴方の子どもが欲しい)
スルスルと滑る手に愛され敷布の海に溺れる。
「ぁ、うぁ、あ…っ」
「アリババくん」
呼ばれ顔をそちらへ向ければ唇が降ってくる。くちゅりと濡れた音を立てながら潜り込んでくる肉厚な舌に背筋が震えた。後孔に突き刺さる性器は動きを止めても尚衰える事無くその存在を誇示している。奪われる酸素と低下する思考の中、無意識にぎゅうっと後ろを締め付ければ軽く舌を噛まれた。
「ん、ンン…ッ」
「悪い子だ」
「ぁ、ひ、」
ゆるゆると動き出した剛直に内壁を削られる。ごりごりと前へ後ろへ攻められたまらない。
「ゃ、ぅ、あーッ」
「いつも君は死にそうな声を出すね」
息も絶え絶えに喘げばそんな風に困った顔をされた。どこか苦しそうな顔をする相手の腰に、力の入らない脚を無理矢理絡ませる。目を見開いた彼に小さく笑えば、優しく頬を撫でられ再び律動が始まった。
「ぃ、あっ、…ひッ、!」
突き入れられる度にごぽりと溢れてくる白濁。ばかみたいに注がれたソレは相手が俺であるばかりに生産性無く死に消える。
(嗚呼貴方の、貴方の子どもが)
もしも俺が女であれば…いいや、ただ生殖器の一つがあれば。
(そうして今夜もあるはずのない子宮が痛むのだ)
ジクジクと焦がれる胸の最奥。敷布に溺れながら俺は今日もそんな下らなくも叶わない願いをおもう。
***
(君を、)
(君を孕ませてやりたい)
唇を合わせるといつも泣きそうな顔をする少年。ああそんな顔をさせたくなどないのに。それでも…それ、でも
(すまない)
意味の無い謝罪を繰り返す俺に、それでも微笑んでくれる少年。こんなにも愛おしいのにそれでも俺は。執着…いやいっそ執念のように彼を犯し注ぐ全てすら彼を縛る事が出来ず。
(嗚呼君を、君を孕ませて)
そうすれば例え結ばれなかったとしても、この子は一生俺という男の影と共に生きて行くのだ。きっと、きっと、
そんな考えに自嘲しながらもやまない祈りに侵食される。彼の下腹部に手を当てなぞり、溢れ出す白濁を感じつつ再度熱に灼かれるように彼に唇を落とした。
(ただ貴方を)
(ただ君を)
((愛してるだけ、なのに))