不純異性交友日記 | ナノ



 白くて、柔らかい肌だった。這わせた手、じんわりとかいた汗にさらに欲情する。遠慮がちに、気にしながら、ゆっくりと手を動かした。手の中でぐにゃりと形を変える胸が、あまりにも刺激的でチカチカする。くっそ、持たねえ。「ジャン……」呼ばれて、顔を上げれば、潤んだ瞳の――

「――ッ!」

 なんだ、なんだ、今、何時だ? 飛び起きて、辺りを見回すと薄暗い窓。誰1人として起きていない。……なんつー夢を見た、オレ。おいおい、まじか。恥ずかしさのあまり俯いた。それから違和感。……勃ってる。そりゃあ、そうだろ。あんな淫夢見せられて余裕でいられるわけがない。ただ、情けない。夢か、そりゃあ、夢だよな。息を吐く。隣にはむさ苦しい同期。いびきがうるさい。しかし、この痛いくらいに勃ち上がってしまった自身をどうしようか。――無視だ、無視。寝るぞ、オレは。あんな虚しい思いはたくさんだ。淫夢もお断りだ。ぎゅっと瞼を閉じて、寝ることにした。




「おはよう」
「……おう」
「え、また寝れなかったの?」

 興奮して、眠れなかった……。目を閉じると、裸のナマエがいる。オレを誘って、それで……ああああああああ!!!!! だめだ、もうだめだ。こんなん訓練とかしてる場合じゃねえよ、なんだよ、しっかりしてくれ、オレ!

「マルコ……もう駄目かもしんねぇな」
「ジャン、え、どうしたの? 本当に、大丈夫?」

 パンも喉を通らない。ひたすら千切って、スープに浸す。「……ジャン、それは、ちょっと……」「ああ、そうだな」「もう、お皿から零れそうだけど」「ああ、そうだな」飲み干せばいいんだ、飲み干せば。

「おはよう、マルコ、ジャン」
「ああ、そう……ナマエッ」

 な、な、なんでオレの前の席に座るんだよ! いつもはクリスタとかと一緒だろ。なんでこんな日に限って。

「おはよう。クリスタ達は一緒じゃないの?」
「うん。今日は朝からお出かけだってー。置いてかれた」
「……あ、今日、休日か」
「……ジャン、どうしたの? 昨日のケガの影響?」
「いや、ぼーっとしてた……」
「最近、ジャンこんなかんじでさ」

 馬鹿、余計なこというんじゃねーよ! 隣を睨むとマルコは困ったように笑った。「ナマエはどこか行かないの?」「んー、マルコ達は?」「特に予定はないんだ。勉強でもしようかな」「やめて、はげちゃう。お休みに勉強とか信じられない」……なんだよ、オレを無視して楽しそうに話しやがって。

「じゃあさ、一緒に街に行く?」

 ――マルコ、お前、サラリと何言った?

「なんか新鮮でいいかも!」

 ――ナマエ、お前も何言ってるんだ。どうしてマルコなんだよ、くっそ出遅れた。だいたい、昨日は生理痛で寝込んでたくせに、今日はいいのか? そんなもんなのか? 「お前、昨日……」「あ! そうだった……。訓練休んだからだめか。マルコ、来週でいい? 今日は仕方ない、勉強教えてよ」どうしてそうなる? 訓練を休んで休日遊びに行くのは禁止されてはいないが、だいたい人目を気にして外出を控える。で、来週マルコ? 今日もマルコ? もしかしてナマエは……、

「教えれるほど頭は良くないよ」
「謙遜しちゃってー。っていうか、ジャンも何気成績良いのが腹立つ。2人に教えてもらったら、わたしも点数上がるかな?」
「……2人?」
「ああ、無理ならいいよ。マルコとやるし」

 マルコとヤる? ……って違うだろオレ! 勉強だよな? は、何の勉強だよ? いやいや座学だろ、座学。しっかりしてくれ、本当に。今日は、最悪だ。

「ジャン、どうした?」
「具合が良くねえ……」
「え、大丈夫なの? 風邪? 医務室行く?」
「いや、いい。部屋、戻っから」
「マルコ、送ってあげて。わたし食器片付けておくから。あ、待って」

 呼び止められて、ひたり手のひらが額に触れる。「ん、ちょっと熱いかも。目の下も隈……できてるし。ジャン、やっぱり医務室行こう? 1人が嫌ならわたしも後で行くから」お前が近くて熱い。お前が夢にまで出てくるから眠れない。……優しくされるから、つい調子に乗る。少しでもオレの事を好いてくれないかって、思っちまう。

「いい、大丈夫だ。部屋戻るから、お前ら勉強してろ」

 なのに、マルコと出かけたいとか勉強したいとか、何なんだよ。どういうことだよ。正直、マルコと近づかせたくないってのが本音で。どう頑張ってもオレはアイツになれねえ。あんな優しくもできない。ナマエはオレのモンじゃない。だけど取られるんじゃないかって、恐怖。――これって、なんだ、いわゆる嫉妬か?

「マルコ、着いてって」
「あ、うん」

 さっきからマルコ、マルコって。そんなに好きなのかよ、勝ち目がねえ。「マルコ」ほら、まただ。「ジャン、一緒に行こう」そう言われ、掴まれた腕。つい、むしゃくしゃして振り払ってしまう。目を見開くマルコを尻目に、同じような面を浮かべたナマエがいる。……なんだ、2人揃って。仲良しだな。

「うっせーよ。いいっつってんだろ!」

 自分でも驚くほど大きな声が出た。ナマエの体が小さく跳ねる。……こんなこと、言うつもりじゃなかったんだ。なのに、なんで。「さいってー……」低く、呟かれた声。「あんた心配してくれたマルコに何してんの? 元気ならはやくどっかいけば」どうして、そうなる。オレはあんた、かよ。ふざけやがって。「お前が関わってなけりゃあ、こうなってねーよ」……今、オレ、何、口走った? ナマエの目が潤む。それから「そうだね、ごめん」そう謝って、駆け出す。なんだ、これ。


 ――ああ、サイアクだ。

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