不純異性交友日記 | ナノ



 気付いたことがある。1つ、オレは東洋人に弱い。1つ、ナマエを見てもミカサを見てもバカみてえに緊張する。1つ、キスがしたい、と思うようになった。

 ……重症だろ。自分で思い返しても、これは危ない。特に最後だ。動く唇に、触れたくて、欲情する。付き合ってもいないのに、どうしてこんな思いをするのか。それはオレが恋をしているからだ。そこまではわかる。じゃあ、オレはどっちを好きなんだ?――そこが、大きな疑問だ。

「ジャン、今日の対人格闘、一緒に組んでくれない?」
「え、あ、別にいいが……」
「じゃあ、よろしくー」

 あの水の1件があって以来、オレはナマエとよく話すようになった。普通なら嫌われてもおかしくない状況だってのに、どうやらアイツは少し勘違いをする癖があるらしい。それはそれでよかった。好きな女に最初から嫌われるなんて、そんな恋愛辛すぎる。第一、発展が望めない。しかし、だ。これ、フラグじゃねえのか? そう思う。だって、興味のない男にわざわざ声とかかけねぇよな。オレと目が合ったら笑ってくれるし、つまり、アイツはオレのことが好きなんじゃ、ないのか? いや、そう思うには情報が足りなすぎる。今日の訓練で、何か聞ければいいんだが……。

 そう思うと、じゃあミカサはどうすんだよ。ってことになる。初めて見た時、綺麗だと心底思った。これが初恋だと知った。エレンなんかと話すなよ、オレを見てくれよ。いつもそう思う。そして絶対に叶わない恋だとも思っている。

 もしかして、だからなのか? 叶わない恋をミカサにして、叶いそうな恋だから似たような東洋人のナマエを好きになったのか? そしたらオレはなんて最低野郎だ。なんなんだよ、くそっ、自分の事なのに何もわからねえ!

「ジャン……、お前、なんかキモイぞ」
「は? なんだよコニー」
「いや、さっきから笑ったり怒ったり、まじ何考えてんのかわかんね」
「……ああ、自分がいかに最低かって考えてたんだ」
「マルコー、ジャンが頭沸いてるぞー!」

 なんでだよ! 本当に面倒なヤツだな、コニー。いつものように手で払うと、入れ替わりでマルコがやって来る。「どうかした?」「いや、もう、何もわからない」首を傾げるマルコを尻目に溜息をつく。この気持ちを、どうすればいいんだろうか。




「――っと、つかれたー!」
「おいおい、まだ終わってねえぞ」
「教官がいない間に、ちょぴっと休憩、しよ?」

 オレは健全な男子だと言い張る。上目づかいに首をこてんと曲げて「しよ?」これは、正直、来る。心臓がバカみたいに跳ねる。慌てて視線を反らして、「あ、ああ」返した言葉は歯切れが悪い。ナマエの言葉の区切り方が悪い。オレは悪くない。男って、そんなもんなんだからな! どうやらナマエには無意識に人を誘う何かがあるらしい。絶対に他の奴には見せたくない、そう思う。

「なあ、質問していいか」
「なあに?」
「どうして、今日、オレと組んだんだよ」

 パチリ、何度か瞬きをして、その度に長い睫毛が影を作った。伏し目がちに「すきだからかなあ……」言った言葉に、待て、これは、まさか、本当に!

「対人格闘って面白くない? ちゃんとやればわたしより大きな人も倒せるんだよ!」
「………………はあ!?」

 思わず上がった声。「な、なに、びっくりした! 急に大声出さないで!」「う、あ、悪ィ……」なんだよ、そういうことかよ。先に「すき」とか言うんじゃねえよ、勘違いすんだろーが!

「あと、ジャンともっと仲良くなりたかった。それだけだよ?」

……………くっそ、好きだ! 笑うな、惚れる! お願いだから、オレの心拍数をひたすら上げないで欲しい。「ジャン?」わかった、わかったから名前を呼ばないでくれ。ミカサとかナマエとかぐちゃぐちゃ悩んでる場合じゃない。この瞬間、好きだと思ったのはナマエだった。それだけだ。それでいいだろ、どうにかなっちまいそうだ。誰か、助けてくれ。


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