だって、だいすきなんだもん! | ナノ



「男子、そのまま残って。女子、今日は上がって入浴先ね。で、夕飯。あとは自由行動。明日は逆ね。女子が残る……こらコニー、嫌そうな顔しない!」

嫌なのはわたしの方だ! なんで? なんでわたしがそんなこと教えなきゃいけないの、キース教官。鬼なの? イジメなの? そりゃあ大事だけどさ……。

「ナマエさん、オレもう腹減った……」
「何で男ばかり残されてんだ?」
「誰かやらかしたんじゃねーの」

 女子たちが出ていき、足音が遠くなるのを確認して黒板を叩く。「静かにー」騒めいていた彼らも大人しくコッチを見た。

「今日は性教育……です。はい。なんでわたしが教えなきゃいけないの? ねえ、コニーどうしてかな? これキース教官のイジメだよね? ね? 男子に教えることって何?」

 目の前に座るコニーに問いかければ、一瞬ぽかんと口を開けて「……え、性?」と口に出してから瞬きをした。……わかる、それわたしも同じ反応したから。

「この中で好きな子がいたり、もしかしたら彼女がいる……は、何なの? そんな幸せなヤツいるの? え、フランツ? 後で話聞くから部屋に来い、羨ましい!」
「ナマエさん、話……」
「あ、ごめんねライナーくん。――まあ、いたとして。いろいろね、知っておいて欲しいわけ。知らなかった、じゃ済まされないこともあるからね」

 察しのついた子達は顔を伏せたり、逆にニヤニヤしていたり。反応は様々で。「この中で、子どもがどうやって出来るか知ってる子いる?」単刀直入に言ったら、ジャンくんがむせた。……え、何あの子、めっちゃ可愛い。コニーはずっとニヤニヤしてる。ベルトルトくんと目線が合って、すぐに逸らされた。しかしあの子も可愛いな。

「精子と卵子が……受精して、新しい生命が誕生するわけだけど、現にわたしたちもその過程を踏まえて、ここで生きてるわけ。で、しっかり考えて欲しいのは、避妊のこと」

 まだ若いから、なんて侮ってはいけない。教育中にそんなこと……なんて思うかもしれないけど、わたしの同期は1人、妊娠して辞めさせられている。「まあ、教育中の不純異性交遊は認めないけどね」と付け足せば、わたしから視線を外す若干名……お前ら。

「好きな奴がいて、んで、付き合って、そういう事になるのは当たり前じゃないんですか?」

 誰かの発言に、頷くライナーくん。窓の外を見ているエレンくんに、顔を伏せたままのジャンくん。反応は様々だけれど。

「いやいや、避妊って100%じゃないって知ってる? 万が一、あんたらのせいで妊娠させられた女子の気持ちにもなってみなよ。例え兵長と……あれ、兵長との子どもならわたし全然欲しいけど、いやいや待て、そしたら前線離れることになるし、やっぱり兵長の側にいたいっていうか、うーん、どう思う?」
「いやいや知らねーよ」

 とりあえずコニーの頭叩いて、溜息ついた奴等睨んで。「まあ、さ、ちゃんと考えて欲しいの。本当にその子のことが大好きで、愛してるんだったら、将来の事まできちんと考えて欲しい。過ちを犯さないでほしい。……この世界でこれ以上の不幸なんて、嫌でしょ」そう言って外を見れば、遠くにそびえる壁。「あの外には巨人がいるんだもん」溜息が漏れる。

「わたしも女だから、あまり多くは教育できないんだけど。本当は女子だけの担当だったし。多分後でもっと詳しい事、教えてもらうと思うから、その時はちゃんと聞いてね。真剣に。――はい、じゃあここまでで質問ある?」

 勢いよく手を上げるな、コニー・スプリンガー。「はい、スプリンガー訓練兵」一応、当ててみる。嫌な予感しかしない。

「ナマエさんは、初体験いつですか」
「……それ知ってどうするの?」

 ほら、周り引いてるよ。むせてるよライナーくん。「おい、コニー!」ジャンくん、遅いよ、止めるのが。「じゃあ、どうやったら子ども出来るんですか?」……あ、あれ、コニー、あれ、ちょっと、待って、え?

「コニー、まじ? 今わたしをからかってる?」
「ジュセイってどうするのか知らねーよ、オレ」
「……え、みんなも? ねえ、みんなも知らないの? 嘘だよね?」

 うんともすんとも言わない彼ら。「コニー……自慰、したことある?」「ジイ?」お願い、誰か助けて!

「コニー、いいか。これは大事なことだ」

 ライナーくんが真面目な顔してコニーに語り掛ける。「第一、お前いつも何のためにオナってたんだ?」……や、やめてください。「うん? 気持ちいから」「……そうか。その時、出てくるだろ、液体が」「ああ、あれ臭ぇよな!」「あれが精液だ。その中の1つが卵子と受精すると子どもができる」「へー、んで、どうすんだ?」「きゃああああああ! もう、止めて! お願いします、お願いします! わたしいないとこで、頼みます!」

 ただのイジメだ! キース教官やっぱり鬼! ライナーくんが性教育教えてあげればいいじゃん。もういいよ、止めよ。

「コニー、セックス知らないのか?」
「エレンくん、何、急に、えええええ!」
「知ってるっつーの! は、それか? アレって子ども作る行為なのか? ただ気持ちいからみんなしてるんだと思ってた!」

 そこに何故か博学なエレンくんも投入し(後にアルミンくんに聞いたら、エレンくんはお医者さんの子どもだったということで)恥ずかしくなって飛び出したわたしを律儀に追いかけてきたマルコくんに捕まり、「いや、あの終わりがわからないので……」そんな時まで優等生じゃなくていいから! やめて! 帰して! 調査兵団に帰りたい!

「つーか、おっぱいってすげえよな」
「大きいのが好きか?」
「いや、オレはさ……」

 わたしを無視してなんつー話を! 「いい、もう止めよう! 終わり! 解散!」 そんなの全く聞こえていないのか、語り合う104期男子。腰を上げたジャンくんが「戻っていいッスか?」と何故か恥ずかしそうなのが可愛かったけどさ。

104期男子に性教育的指導
(「ナマエさん、実技は? 実技は?」「コニー、削ぐよ?」「……ジョウダンデス」)

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