だって、だいすきなんだもん! | ナノ



 うーん、この状況下はマズイなあ。なんて壁際で黙々と考える。どうしてこういう時にだけ人っこ1人通らないんだ! あ、兵長以外でお願いします! 勘違いとかされたくないんで!

「どうして黙ってるのかな?」
「……どうして、壁ドンとかいう甘いシチュエーションなのかな?」

 わたしが首を傾げると、ナナバは口の端を上げてみせた。あー、恰好良いんだよね。こういう表情とかさ。知ってるんだよ、104期にも好かれてるって。そりゃあ紳士的だもんね。どっかの兵長よりかは断然魅力的かもしれないけどさ「近い!」何も言わないでいると、顔面がすぐ目の前だから、困る。どうやらナナバにとって、わたしに悪戯をするというのが最早定番と化していて。それをゲルガー辺りに「今日のナマエ」とかいう定義で話しているらしい。全く、困ったもんだ!

「今日も可愛いと思ってさ」
「わー、ありがとー」

 大して気持ちの籠ってない言葉に、ナナバの表情が少し陰る。「私も怒るって知ってる?」「あれ、いま、怒ってらっしゃるんですか……?」ついつい敬語になるのは、わたしの心が恐怖に埋め尽くされているからだ。

「少しだけ」

 あー、近い、近い、近い! ゲルガーどうした! いつも行動を同じくして何故いないんだ! ミケ、ミケー、自慢の鼻でわたしとナナバが一緒にいることを察して助けにきてくれー! まあ、ミケのことだから鼻で笑って終わりなんでしょ!

「今、誰のこと考えてる?」
「えっと……」
「私以外だったら、嫌だな」

 耳元で、やめてください、本当に。肩を窄めて耳と近づけると、クツクツと笑い声が聞こえる。「本当に可愛いな」こうやって何人口説いて、食ってきたんですか。巨人より質悪いなあ、もう! けれどわたしは屈しない! だって、わたしの心臓は兵長に捧げるって決めたんだから。

「ナナバッ、やっ」

 片手は壁に、あいた手をわたしの腰に這わすナナバはとっても色っぽいけれど、懸命に身体を捩る。「嫌がらないでもいいのに」いいえ、嫌がります。抵抗はします。でも体術に持ち込めないのはナナバが本当に怖いからです!

「キスくらいならいいかな」
「キスをくらいっていわな……ッ!」

 ちゅっとリップ音を立てて顔を離すナナバはとても満足そうで。やられた。下唇はつい最近リヴァイ兵長に噛まれた記念の唇なのに! ぐっと奥歯を噛みしめる。「泣きそうな顔しないでよ。傷つくから」「ナナバ、ひどッ」思わず振り上げた手を拘束されて、お腹の辺りに下半身を押し付けてくる。びくとも動かない体、「なにす、」頭がわたしの首に埋まる。まさか、血の気が引いた瞬間に覚えのある痛みが走る。クツクツ、また喉で笑ってわたしを開放するとナナバは言うんだ。

「私のものだって印だよ」

 手をひらひらさせながら去っていく背中が憎い。くそう、やられた。しばらくは首筋を隠して生活しなきゃいけない。「ナナバのバカー!」ぽつんと残された廊下、わたしの声だけが響いていた。


苦手なもの:ナナバ
理由:怖くて言えません


(「オイ、寝違えたのか?」「……いいえ」「ナマエさん、ゲルガーさんに聞いたんですけど、ナナバさんと付き合ってるって本当ですか?」「エレンくん、今、何て?」「そういうことか。良かったな」「ちがっ、兵長、まっ!」「ナマエさん、その首の痕なんですか? ケガですか?」「キャーーーー! エレンくんの悪魔ァァァ!」)


わたしの中でのナナバさんは、紳士だけどこういうことを恥ずかしげもなくやれる人だと思ってる。ナナバさん、好きだ。ということで、アンケでも票の多いナナバさんでした。その他でぶっちぎりの票を獲得してました。

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