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 ぐっと頭のてっぺんを手で押さえられ、ガクンと下を見させられる。「いっ!」予想以上に曲がった首に痛みを感じ声を上げたその瞬間に、「ひやっ!」情けない声があがる。

「兵長、待って、ひっ」

 うなじを削いでもわたしは死なないよ、それ巨人だから! と言ってやりたいのに、歯が食い込む度に涙が溢れる。そんな、ばかな、わたしを何だと思ってるんだ兵長は。噛むだけならまだしも、時折這う舌に鳥肌が立つ。「へいっ、ちょ、んッ」なんだっけ……。なんか野良猫がこんなことしてたなあ。お母さん猫が子どもを口に咥えて……いや、わたし達人間なんですってば、兵長。

 軽いリップ音と共に顔を離した兵長がわたしの前に立つ。慌てて首筋を触れば、ぬめりとした感触に思わず顔を顰めた。

「一体何なんですか!」
「弱点見せて歩くな、テメェは巨人か」
「……はい?」

 弱点? いやいや確かに首は弱いですよ。弱いです認めます。「見せて……。あ、今日髪結んでるから?」半端に伸びてきた髪を上の方でまとめてみた。暑いし何より邪魔だし、と結わえた束をぐっと掴んで兵長は眉を寄せる。

「削いでやろうか」
「意味がわかんない、です」
「そうか」

 ゴムに指をかけひくと、絡まった数本の髪の毛がブチリ音を立てた。「やっ優しくしてくださいよ!」「何言ってんだ。これは躾だ。優しくしちゃ意味ねえだろ」……なぜ? なぜだ、わたしにはわからないな。躾をされている、意味が!

「まあ、いい」
「……は、はあ?」

 その日、大浴場で「ねえ、ナマエどうしたの? 首すごいことなってるけど」「へ?」という会話をペトラとした後、歯型と赤いマークだらけのうなじだと知って、暫く髪を降ろす日々が続いたのだった。

汗ばんだ肌に欲情したなんていわないさ

「ナマエさん、髪上げてると色気が、なあ」「ああ、そそる」という会話を耳にした兵長のご乱心の結果だと知ったのは、1週間後に団長と話した時だった。
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