macaron momen | ナノ

09


 結構キルの事大事にしてるんだけど。考えて一番良いようにしてあげてる。なのにこうして反発されるとさ、何かを滅茶苦茶に壊したくなる。気長に待てるようなタイプじゃないし。好きなものは一番最初に食べる。嫌いなものは捨てる。でもキルは特別なんだ。そういうの、なんでわからないのかな。

「……愛の、考え方が違うんだと思う」

 普通とは違うけれど、イルミのソレは愛だと思った。そして普通の愛とは何だろうとも考えた。例えば目の前で愛した人が死にかけているとする。もう命が助かることはないという状況で、苦しい苦しいともがいている。その時に「殺してくれ」と言われ殺すのが愛だと考える人もいれば、そのまま側にいることが愛だと言う人もいる。結局形の無いものだから、自分の型に当てはめて「愛」だと押し付ける。その型が同じであれば「愛しあえる」し、違えば「愛しあわない」のだろう。

「ナマエの愛って何?」

 随分と難しい質問に唇を噛みしめた。「……なんだろう。わたし、愛されたことあったのかな。わからない」両親の顔が浮かぶ。だけどその笑顔に違和感が付きまとう。あんなに可愛がってもらっていたのに、まるで夢みたい。

 物思いに更けていると、ギシリとベッドが鳴った。先程首に回っていた彼の指先がわたしの顎を軽く掴む。コテンと首が傾いた。さらりと髪の毛が揺れる。そんな光景に目を奪われていると、指が離れ後頭部へと回った。「え、何?」と思った事が口に出る。イルミはそれに答えずにぐっと距離を縮めた。あ、と思った時には遅かった。彼の鼻先が頬を掠めた。何度も、何度も角度を変えて。その度に視界の隅には揺れる髪があった。急にどうしたんだろう。彼の中で何があったんだろう。一度離れた隙に大きく息を吸う。するとまた始まる。とうとう視界が霞んできて、起こしていた上半身がベッドへ埋もれた。イルミは片時も離そうとせず、そのまま一緒になって体を倒す。「邪魔」と声が聞こえたと思うと身体を起こし、長い髪の毛を手早くまとめた。その光景も霞んでいて、上がった息は整うことを知らない。

「愛って何? 優しくする事。気持ちよくなる事。苦しませずに殺す事。考えてみたけどわからないんだよね。ねえ、今どんな気分?」
「えっと状況がよく掴めていない、気分」
「抵抗は一切してなかったけど」
「イルミが何考えてるか考えてたよ」
「へえ、わかった?」
「全然」
「利用できる所は全部利用しておこうって考えてる」

 少しだけ熱を持った掌が体に触れる。イルミって人間なんだなあ、と馬鹿みたいな事を思ってしまった。「わたしに価値が無くなったら、殺すの?」お腹から上へと上がっていった手がピタリ、止まった。

「どんな死に方がいいか考えて置いてよ。そのうち殺してあげるから」


 ああ、最悪だ。自分にでさえ自分の価値がわからないというのに。


あてはめ


▼ 順番の変更・内容修正
Material from HADASHI / Design from DREW / Witten by 腎臓からレニン / 2014.08.15 修正





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