へんなやつ | ナノ


 おはよう、随分と眠っていたみたいだけれど。「お、お化け」って、そんな驚き方は無いんじゃないかな。僕、とってもナイーブなんだよ。「何? 何なの?」うーん、そうだなあ、この世界だと妖精っていうのに分類されるかな。幽霊じゃないよ、お化けでもない、妖精、フェアリーさ。「は?」ああ、大きな声は出さないで。君はまだ、意識を失っているんだよ。「なんで?」何でって、そうか、そこも食べちゃったのか……。反省しないとだね! ああ、こっちの話。いや、君にも関わりのある話かな。簡単に言うと、君は記憶喪失なんだ。

 名前、覚えてる? 住所は? ね、わからないでしょ。だって僕達、食べちゃったんだもの。この世界ふらふらしてて、適当な人間の適当な記憶を食べて生きているんだ。あまくて、おいしい記憶は、君が満たされていたという証拠なんだろうね。おいしくて、おいしくて、いっぱい食べてしまった。僕の弟達はまだ、幼くてね。君が寝ている事をいい事に、たらふく食べてしまった。ごめんね、本当に悪かったよ。コレを返すことはできないのだけれど、きっと君は思い出せる。その為のフォローはするよ、大丈夫。

 この世界の言語で僕達を表せる記号が無いから、適当に呼んでくれ。「くろ、あお、あか?」うん、それで構わないよ。あおとあかはまだ幼い双子で、言葉も上手ではないけれど。反省していたんだよ、君の為に何かできることはないかって。

 君が眠りに着く頃、眠っている間、僕達はそこで会える。何か困った事があったら、目を閉じて、3秒数えるんだ。

 そろそろ君の大事な人が来る。まずは起きて、自分の状況下を確認した方がいいね。大丈夫、見守っているよ。それじゃあ、


\身勝手? そんな言葉は妖精界にはなかったなあ/