Between you and me, | ナノ

旅の道中、深まる疑問



初めのうちは、興味のあることをひたすら追求していくことが楽しくて。だから、忘れていたのだ。――どうして、連れてこられたんだろうって。

「パリストンが怒ると思ってな」
「……えっと、うん?」
「面白れえだろ? いつもバカみてえに笑ってる男の表情が一変するとかよォ」

……あれだ。この人、馬鹿なんだ。根本的に、何か違う。いや、自分が面白ければいい人だ! そうですか、と溜息と共に言葉を吐き出せば、頭を軽く叩かれる。

「あとは、お前がつまらなそうに仕事してるのが、ムカついた」
「……え?」
「コイツ何のためにハンターやってんだ? そう思ったからな。金の為に仕事してるわけでもなさそうだし、名誉とかンなのも興味がないんだろ? なら自分の為か? それなら尚更面白いだろ、ハンターってのはよ。なのに、しけた面で研究室籠りやがって」
「……何の、為に」

 医学や薬学を勉強したいと思ったのは、近所にいた町医者の影響だった。幼い頃、高熱で3日3晩、意識を失っていたわたしを必死に看病してくれた。一命を取り留めて、そこから小さな診療所に入り浸るようになった。「この薬草は、擦り傷に。あれは解毒」丁寧に教えてくれたその人が、姿を消したのはいつだったかな。風のうわさで、医師免許を持っていなかったという理由から捕まったのだと聞いた時の絶望が忘れられない。――彼にはお金がなかった。膨大な費用のかかる大学へ行くことが不可能だったと。それは、わたしも同じだった。

「お金が、なかったから。ハンターになれば、免除されるし」
「それは聞いた。パリストンからな。馬鹿なヤツだと思った。女で、しかも運動が一切苦手だってな。試験官、アイツだったろ? お前を受からせたくて必死だったって知ってたか?」

……なに、それ。パリストン? まさか、嘘でしょう。
確かに、無謀だとは思った。小さい頃から本ばかり読んで、外で遊ぶことの少なかったわたしが、ハンターなんて。ただ、かけてみようと思った。例え、ハンターになれなくても、資金を出してくれる人が見つかればいいと、浅はかな考え。しかし、何故か上手く試験を突破する。知能指数、運試し、拍子抜けするものばかりで。

「ジジィが妙だと言ってた。まあ、そうだろうな。でもそれもお前の運だ、ナマエ。胸を張っていい。お前はハンターだ。ただ、醍醐味を忘れてねぇか? 狙った獲物を狩るのがハンターなんだぜ?」

 





「……って言っておきながらジンさん、わたしを運転手にしたかっただけ?」
「あー、何のことだかサッパリだ」

 助手席をいっぱいに下げて、足を放り出すジンさんを殴りたい衝動を抑え、運転に集中する。「空からの方が早いのに」「バカだな。目的地に簡単に着くなんてつまらねぇ」「いやいや、まる2日運転しているわたしの身にもなってよ!」仮眠が3時間。こんなんじゃ事故を起こすかもしれないっていうのに、ジンさんはあっけらかんとして言う。

「1週間引きこもって研究とかザラにしてたんだろ。平気じゃねぇか」
「それとこれは違う!」
「まあ、オレにも理由があってな。逃げてる最中なんだ」
「……犯罪でも犯したんですか?」

 あ、ハザードランプ付けないで! え、車寄せろ? 横暴すぎますって! 「何ですか、何かあったんですか?」律儀に寄せると、ジンさんがサイドブレーキを引く。

「変わってやろうと思って」

 そう笑う彼を神様だと思ったのはほんの一時だった。アクセル全開のカーレースを望んだわけじゃない。死ぬかと思ったし、実際ジンさんも建物に突っ込みかけた。「運転の担当は?」「……わたしで、お願いします」少し不貞腐れたような顔しないでください。

 っていうか、結局わたしの仕事って何なの? ドライバー? 謎は深まるばかりだった。





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