とりあえずパパよりは格好いいよ



「………何よガキ私に何か用なの」

烏野高校の入学式。確か、私が西谷にかけた最初の言葉はこうだった気がする。これは私も今見るとひどいとは思う。だがしかし本当に子供に見えたのだ。私とあまり変わらない背丈、中学生にしか見えない学ラン、くりっとした目。性格。どこをとってもガキだと思う。うん。


「名前!潔子さんだ!今日も麗しいなあ!!!」

「はいはい」

騒ぐな煩い、と西谷の頭をはたくと痛ぇとわめきはじめた。煩い。だいたい西谷は潔子先輩をみるといつもこうだ。私は潔子先輩がだいだい大好き(絶対田中とか西谷より好きな自信ある)であるが、騒いだりしない。潔子先輩は遠くから静かに眺めるのが一番美しいのである。いや、真正面で話せるに越したことはないのだけれど。

「潔子さんは今日も麗しいというのに名前は可愛いげがないな!」

なんでおんなじバレー部のマネージャーなのにこんなに違うんだろうな!だ、そうだ。コイツなんてことを言ってくれるんだちくしょうめ。可愛いげがなくて悪かったな。思いっきり足を踏んでやると西谷が痛ぇ!と涙目になり始めた。知るか。これだからばか正直は。

「おーっノヤっさん探したぜー」
「名前さんも一緒だね」

向こうから来たのは田中と縁下くんだった。田中は煩いけどいいやつだし、縁下くんは、なんていうか天使だ。エンジェルだ。何の用かと思えば集合場所の変更らしい。できれば潔子先輩から聞きたかった……なんて思ってないよ。うん。


「……了解」

隣を見れば西谷がむすっとした顔で田中に了解を伝えていた。ていうかなんでむすっとした顔なんだろうか。二人は解ったらしく、そそくさと去っていった。てか置いていくのかよ、こうなった西谷の対処の仕方知らないんだけど。

「……西谷?」

「…今日の練習試合、絶対かっこよく勝つから」

「………うん?」

「………お、俺のこと、な、名前で呼んでくれてもいいんだぜ!」

………なんだか腑に落ちないしよく分からないけれど、勝ちたいって気持ちは伝わったのでよしとしようか。


とりあえず、
パパよりは格好いいよ

(………たぶん)
(……素直に喜べねぇな)

title.誰そ彼
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