この手を離したらダメだよ
嶺二はとても優しいひとだ。こんなわたしのために色々してくれて、頭を撫でてくれて、わたしの欲しい言葉をくれる。
今だってそう、勝手に嶺二のドラマの共演者に嫉妬して、……馬鹿なわたしだ。
「もう、こんなわたしやだよ。しんどいよ」
ぽろぽろと涙を流すわたしに、嶺二は「君は頑張りすぎだよ」と頭を撫でてくれる。
「…僕はもう大切なひとを失いたくないんだ」
ぽつり、嶺二が呟いた。ぎゅ、っとわたしを抱き締めて、君がいなくなってしまうくらいだったら…と言って、頭をふるふると降った。ごめんね、悲しそうに笑う嶺二。
抱き締める嶺二の腕から伝わる熱、暖かさがわたしの心を溶かしてくれる。わたしの涙はいつしか止まっていた。嶺二の顔は見えない。
「嶺二、ごめんね」
ぎゅ、とわたしが嶺二を抱き締める。塞き止められていた涙がぽろぽろと溢れ、嶺二の肩を濡らした。嶺二の鼻をすする音と、わたしの泣き声が部屋に響く。
「嶺二が泣けないなら、わたしが泣いてあげる」
「君が甘えるのが苦手なら、僕が甘やかしてあげる」
わたしは嶺二がいないと生きていけない。これから先もずっとそうだと思う。それでいいんだ。わたしと嶺二は深いところで繋がっているだろうから。
この手を離したらダメだよ
(I will be there for you.)