彼は羅刹か彼女は人か (4/5)


ああ、短い人生だったなあ、死ぬんだなあと黒髪ポニーテールのお兄さんに刀を突き付けられた時思った。

雪が舞う冬の京都。文久3年12月のこと。


茶髪のお兄さん(……年下に見えるけど)が斬ろうだのなんだの言っているが、本当に物騒なことを言うのはやめてほしい。

「この子たち見ちゃったんですよ、さっきの…」

さっきの、ってああ、白銀のヒトっぽいなにかか。
血、絶対美味しくはないだろうなー。

「あ。君、なんともないですか?」

にこ、と自分なりに笑うと、その子は目を反らした。……もしかして、嫌われたのだろうか。
ガーン、と若干ショックを受けていると、

「おい、そこの」

右に刀を差した濃紺の髪の人が自分を差す。

「そこの、やなんて……自分には雲居霰という名前があるんです」

いーっ、とちょっと怒ったふりをしてみる。

「……雲居とやら、笠を外せ」

「!……お断りします」

「一くん、そんなの後でいいでしょ。」

「そうだな。まずはこいつらを縛って、屯所に連れ帰るぞ」

それからあっという間に縛られ、屯所に向かっていった。笠ねぇ。取ったら取ったで騒動ありそうやし……それは聞けへんなあ。


そしてどこか一室に子とともに放り込まれた。

「……………眠れるわけないわなあ」

隣の子はすぅすぅと寝ている。疲れていたのだろう。というか………女の子、でいいんだよな。袴をはいているけど。危機感なくすやすや寝てるけど。

「……助けてあげるさかい」

その子を撫でて、朝を待った。





日が登って。
すっ、と音がした。襖の方を見ると、昨日の人達よりは優しそうな人がいた。

「起きているかい?ちょっと広間まで移動してもらうよ」

言われるがままに、二人で立ち上がって彼についていく。

「今幹部連中で、あんたらについて話し合っているんだ」

はぁ、と気の抜けた返事をしつつ、上に目をやる。笠は被ったままだったか。よかった。

「皆待たせたね」

襖を開けたら、イケメンパラダイスでした。
……………全員から、殺気出てるけど。

「おはよう、昨日はよく眠れた?」

にっこりと、昨日の茶髪の人が笑う。

「寝心地は、あまり良くなかったです…」

女の子が口を開く。

「…ふぅん?僕が君たちに声をかけたとき、全然起きてくれなかったけど………?」

「え、自分は起きとりましたけどあなたは見ませんでしたよ?」

「あはは、君もばらさなくていいのにさ……あ、別に京出身なの隠さなくていいのに」

「……はぁ、」

まったく、怖いな茶髪の人。


幹部その中でも、一番背の低い髪を高く括った少年が口を開く。

「へぇ、こいつらが例の?」

「お前も似たようなもんだろう、平助」

…………なんだろう、聞いたことのある声がしたような気がする……。
なんか、あの色男、見た気が…見たくないような見たいような……

そこの3人がわいわいと喋っていると、大将っぽい人が、まぁ座ってくれと床を叩いた。

女の子の名前は雪村千鶴ちゃんというらしい。どうやら新選組に関わりのあるお医者の娘なんだとか。

一くんと呼ばれていた人が雪村さんを部屋に返していた。
さて、次は自分か。

「自分は……雲居、霰といいます」

色男がぴくり、と動いた。どうやら原田さん、みたいだ。なるほど、みたことがあるわけだ。

笠を取る。あまり人前に出さない髪が落ちる。
場の空気が凍った。


「ら…………羅刹、じゃ、ねぇよな」

自分の髪は、白に近い紫だ。羅刹というのは、あれを指しているのだろう。

「馬鹿野郎、目の色がちげえだろうが」

「ええ、きっと羅刹、というものではないですよ」

ふ、と笑うと原田さんが吃驚したように顔を上げた。

「雲居……」

「お久しぶりです、原田さん」

ああ、出来ればもう少しいい再会の仕方はなかったのかな。




三、彼は羅刹か彼女は人か
(…早く解放されたいなあ)




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -