太陽が昇るということ

彼とfineの対決は、もちろんfineの勝利に終わった。
彼の予想通り、私は今回のステージの演出に関わっていた。
日々樹は、こちらを見ようとはしない。私も、彼を見つめることは無い。
これでいいんだ。彼が、望んだことだ。
恋をしたって叶わない。気づくのも、遅すぎた。だからもう。
そう思っても、割り切ることは出来なかった。
幕が上がっていく。あの時と同じように。
ただ、観客の歓声ではなく、罵声ばかりで。
それでも、笑顔の彼の歩みを止めることは誰にも出来なかった。

fineは連戦で疲れていたこともあったのだろう、天祥院が幕が降りる前に倒れた。
ビジネスライクだったらしい2人はもちろん、青葉は何か本番直前にあったらしく……動かなかった。
彼を支えたのは、日々樹だった。
私は救急車を呼び、保健医である佐賀美先生をを呼んでいた。
天祥院はたぶん、入院することになるんだろう。彼の幼なじみだという眼鏡の彼……蓮巳が悔しそうな顔をしていた。
意識が朦朧としている天祥院の手を、無意識に握っていた。

「ごめんね」

彼は一体、誰に謝っているんだろう。

程なくして、私とアイドル科の縁は切れた。
学校が、プロデュース科を新設することを決めたからだ。もう演劇科は必要ない、との事だった。
また輝きを失った世界。私が生きているのは、暗い深海の底。
いくら眩しい太陽が登っても、照らされることもないだろう。
私の太陽は、紛れもなく彼だったから。
アイドル科はあの時から、いろいろと変わったらしい。噂でしか聞かない内容だ。あまり、気にも止めていない。

この学校は、何が変わったのだろう。
天祥院は一体、この学校を変えられることが出来たのか。
それは、私にはわからないことだ。
目を伏せ、めまぐるしく回っていた季節を思い出す。
今日は、どうやら雪のようだ。
下駄箱で靴を履き替えていると、周辺がざわりとした。
そこに居たのは、傘もさしていない青葉だった。

「分からないんです。今も、あの選択は正しかったのか」

僕は、彼のために。そう続けた彼は、元気もなかった。
私は立ち止まる。

「私だってわからないよ。貴方達を助けたことで、評価が上がったわけでもない。ただ、」

ただ?そう言って彼はマフラーに顔をうずめた。
私は続ける。

「ああでもしないと改革できなかったのかは、疑問だけど。彼を贄にしたことは、許されないと思うけど。
アレが、彼なりのやり方だったんだろうね」

私は、なにも動けなかったから。時間が動き出しただけでも嬉しいと、そう思うよ。
そう言って、私は彼をおいてけぼりにし。彼……天祥院がいるという、病院に向かっていった。


太陽が登るということ
ー太陽が登っても、私にはなにも関係がなかったみたいだ

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