いいこにしてたらひとつだけ
「名前ちゃーん!!明日は何の日でっしょーう!!ふっふー!!!!」
「7月13日………ああ、ワールドカップが初めて開幕した日ですね。それが何か?」
「へ〜、そうなんだ、嶺ちゃん知らなかった〜ってちっがあう!もっと!身近!」
近くに座っていた寿先輩が日付を確認した途端ニコニコしながら私に話しかけてきた。果てしなくウザい。
「くすん………僕悲しい……恋人の名前ちゃんに覚えてもらってないなんて………」
ついに嘘泣きまでしはじめた。最悪だ。
「………知ってますよ、寿先輩の誕生日でしょう。」
諦めてそう呟けば、寿先輩の嘘泣きが止まった。
「もお!ちゃんと知ってるじゃん!僕ちん激おこだよ!」
「若者の言葉を無理して使うんじゃありません」
ぱち、とデコピンをすると大袈裟に痛ああい!!と痛がる寿先輩。こんなだからバラエティ要員になるんじゃないだろうか。
「うう…………この仕打ちは酷いよ………」
「そうですか」
「うわあああん名前ちゃんがいつにも増して冷たい!!!!嶺ちゃん泣いちゃう!!」
グズグズと私の胸に頭を擦り付け始めた寿先輩は相変わらずだ。私そんなに胸ないのだけれど、楽しいんだろうか?
「………名前ちゃん今日は泊まってくの?」
「流石にこの時間に帰ると思いますか?」
ちらりと時計を見ると、11時59分だった。いよいよだ。ちょっと、柄にもなく緊張してしまう。
隣の寿先輩は照れたような焦ったような顔をしている。
ぴかり、と携帯が光った。
「あ、あの。………お誕生日おめでとうございます、嶺二さん、」
顔、赤くないかな。と思った途端、寿先輩が勢いよく抱き締めてきた。
「もー…………名前ちゃん、反則だよ」
名前ちゃんに、こんな可愛いことされて、僕がなにも思わないと思うの?とっても可愛いよ、My girl。そういって寿先輩はキスをしてくれた。
ちょっと頑張った甲斐、あったかもしれない。
いい子にしてたらひとつだけ
(よおし!今夜は帰さないぞ!名前ちゃん!)
title.メルヘン
嶺ちゃんお誕生日おめでとう!
2013.07.13