花明り焦がす掌



最近俺の管轄に入った名前は俺をこう呼ぶ。

「あちかさん!」

流石に俺も最初は吃驚した。どうやら最初に俺の名前を見たときに"阿近"を"あちか"と読んだらしい。それで癖が抜けないだとか。

この変人(俺など人と呼べないような奴もいるが)だらけの技術開発局で名前は至ってまともな部類に当たる。

まあ局長があれだから変人しか集まらないので、名前も変なところに拘りをもつ変人であることは間違いない。


「………俺は"あこん"だ、名前」

「知ってます!あちかさん!」

「おい」

もうつっこむのも面倒になってきた。名前には訂正してもずっと"あちか"と呼び続けるのだろう。


何故"あちか"、と呼ぶのかを聞いてみたことがある。

「私だけが呼べるんです」

他のみんなは"あこん"さん、って呼びます。男の人も、……女の人も。でも"あちか"さんは誰も呼びません。だから、私が1人で特別だと感じているんです。

ふわり、と笑う名前の頭を、くしゃりと撫でたのは不可抗力だと思う。





花明り焦がす掌
(全く、可愛いやつだ)




title.M.I
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