小指絡めて幸せの温度


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「名前」
私が屯所の縁側で涼んでいると左之さんが隣に座った。ここにいたのか、と呟く左之さんの手にはお酒らしき物が。自重しないなぁ。

「確か、今日だったよな、お前が屯所に落ちてきたのは」
「そうですね、恥ずかしかったなぁ」
クスクス、二人で笑いあう。私はこんな時間が好きだ。左之さんは私の心を浮わつかせる。恋をしてはいけないというのに、この心はどうも私の言うことを聞いてくれないらしい。

「左之さん、私実は今日誕生日なんです」
友達からもらったゲームであるが、運命的な出会いをしたのが誕生日というのは特別で嬉しかった。でもそれは絶対に結ばれない次元の違う恋だった。

「そうだったのか」
祝えなくてすまなかったな名前、おめでとう。左之さんは少ししょんぼりしながら言ったけれど、私はそんなつもりはなかった。元の世界に帰れば祝ってくれる人は沢山いるだろう。けれど、今隣にいるのは左之さんだ。私は左之さんに祝われるだけで充分だ。

「ありがとうございます」
その言葉だけで嬉しいですよ、そう続けると左之さんは私の頭をがしがしと撫でた。ちょっと痛いけど、なんか嬉しい。
「名前は無欲だな」
普通なら贈り物を要求するんじゃねぇのか?と笑う左之さんは夜だというのにとても輝いて見えた。私は左之さんが隣にいてくれるだけでいいんです、そう思ったけれど口には出さなかった。

「じゃあ一つだけ約束してください」
来年は新選組の皆で私の誕生日、盛大に祝ってください。もちろん宴会で!と言い切って小指を出すと、照れたように笑った左之さんは名前には敵わねぇなと呟いたあと、私の小指に自分の小指を絡めた。

「「ゆーびきりげんまん 嘘ついたら針千本のーますっ」」
神様、左之さんに恋されたいなんて贅沢なことは言いません。どうかこの優しい温かい時間を、もう少しだけ続けさせてください。



小指絡めて幸せの温度



title:藍日


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