ほっぺたはマカロンカラー


そういえば、とふと思う。私、今日誕生日だっけ。いつからか誕生日が嬉しいと思うことは無くなっていた。年をとる度回りの景色に自分が取り残されているような気がして無性に悲しくなった。年月を重ねていく程に回りの友達は私を置いてゆき、幼なじみの二人はどんどん手の届かない場所に行ってしまうのだ。

私の幼なじみは原点にして頂点とか伝説とか幽霊とか言われている無口な最強くんと、カントーの最後の砦となり挑戦者の前に立ちはだかるトキワジムのイケメンリーダー(自称)である。対して私はずっと旅を続け、最近イッシュ地方から帰ってきたところなのだ。

サンヨウのカフェでサービスしてもらえばよかった、とカラフルな三つ子を思い出しながら道路を歩く。傍らには相棒のブースターが甘えるようにすり寄ってくる。長年の相棒で、私の世界でブースターだけが変わらないのだ。


久しぶりに家のドアを開けると、鍵が空いていた。お母さん無用心だな、とドアノブを捻るとパアン、と大きな音がした。

「ナマエ誕生日おめでとう!!」
私の目がおかしくなっていなければ目の前にはグリーンとレッドがいる。いやいやまてまて、不法侵入だろう。そしてレッドはお母さんに顔を見せに行きなさいよ。と一人考えなくてもいいことを考えているとレッドにほっぺたをみょーん、と引っ張られた。痛いんですけど!?

「ナマエが阿呆みたいな顔してたから」
あと柔らかいね、とレッドはほっぺたをむにむにしている。いやいや阿呆みたいな顔ってなぁ………もっと言い方があったろうに。それに疑問は一つも解決してないからな!!!

「ナマエの母さんがここ貸してくれたぜー」
グリーンがにこやかに疑問を一つ明かしてくれたがお母さんなにをやってるの。いくら幼なじみでもやっていいことと悪いことがあるでしょうが。まぁいいけど。

「もしかして、嫌だったか」
二人が若干しょぼんとしたものだから慌ててそんなことない!と声を出した。ビックリしただけ、凄く嬉しい!と声を上げると、グリーンはとたんににこやかになって、レッドは分かりづらいけど口角が上がった気がする。

「あっちょっと待ってろ」
グリーンはそういうとレッドを引きずって部屋を出ていく。扉越しであるからか会話は全く聞こえない。しばらくするとグリーンだけが出てきた。レッドはどうしたのだろう。

「ほい、これな」
そう言って渡されたのは長細い箱だった。なんだろう。どくけしかな。
「なんでどくけしなんだよ」
逆にビックリだわ、と言った後グリーンは頭をガリガリと掻いた。
「思い付かなくてネックレスにしたんだけどよ、嫌だったか?」
中に入っていたのはエメラルドがついたネックレスだった。かなりの値がはったであろうネックレスを幼なじみなんかに上げていいもんなのかグリーンさん。

「嬉しいけど、これかなり値段張ったんじゃない?」
そう溢すと俺がしたかったからいい、と返された。さすが自称イケメンである。
俺が着けていいか、なんて色っぽい声で言うものだから思わず頷いてしまった。

首に触れるグリーンの手がなんだかドキドキする。いつもはボールを握る手、こんなに成長していたんだと思わされた。意外と繊細に動く指は、細いけれど男のひとのゆびであった。

「何でそんなにガチガチなんだよ」
軽く笑って首筋をつぅっと撫でるその指に反応してしまって普段私からは絶対に出ないであろう声を発すると、グリーンはより一層笑みを深めた。

「ナマエ、誕生日おめでとう」
顔、真っ赤だぜ?そう言って後ろから抱き締めてくるグリーンは確信犯なんだろうなと火照った私は思ったのである。


ほっぺたはマカロンカラー
(ところで僕はいつまでここにいればいいのかな)
(あっ!!)





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