雨の日の恋人


ふと、嶺二の顔が見たくなった。

雨が降り続ける外を眺めながら、嶺二の車が通りゃしないかと目を凝らして見つめていた。梅雨でもないのに連日雨が降るこのあたりは、どうやら午後には晴れるらしい。

スマホをすい、と操作して嶺二の番号を呼び出そうとしてやめた。有名メーカーのスマホは嶺二と同じ機種だ。カバーも色違いである。

「嶺二もきっと疲れてるだろうし、うん」

スマホをひとなでし、置こうとすると、着信音がなった。着信は、さっきまで連絡しようか迷っていた、嶺二である。

「れーじ、」

驚いて、うまく喋れなかったかもしれない。どきどきして、今にもスマホを握りつぶしそうだ。そんなことしないけど。

『名前ちゃん、驚きすぎ!』

電話越しでもわかる、嶺二の笑顔。柔らかくて、大好きな笑顔。

「嶺二の顔、見たいと思ってたから」

『本当?!僕もね、名前ちゃんの顔が見たいと思って……来ちゃった』

えへ、と笑う嶺二。玄関を急いであけると、顔を確認する暇もなくぎゅうとされた。

「んー名前ちゃんのにおい久しぶりだ〜!」

「れーじ、」

何かあったの?と聞けば、名前ちゃんにはなんでばれちゃうかな、と悲しそうに笑った。

仕事でミスをした、といった嶺二はやつれた顔をしていた。マスターコースに自分の仕事、カルテットとしての仕事。連日の雨で精神もまいっちゃったのかな?そう呟く嶺二。社長もたいがい嶺二に重圧をかけすぎている気がしないでもない。

「嶺二、」

頭をぽんぽんとすると、なあに、ともっとすりよってきた。犬がじゃれてくるみたい……それは彼氏に失礼かな。

「今日は甘えていーよ」

「ほんと?じゃあ膝枕してもらおっかな〜!」

玄関をあがってソファーに二人座る。肩を寄せて、膝枕をした。

「嶺二、よく頑張ったね」

「名前ちゃん、ありがとう。大好き」

わたしの大好きな笑顔で嶺二は夢に落ちていった。
どうやら外は晴れたらしい。嶺二がまた頑張れるよう、お天道様も頑張ってほしいものだ。わたしも、嶺二が頑張れるように頑張るから。

額にひとつキスを落として、わたしも目を瞑った。







雨の日の恋人
(晴れたらどこかに出掛けようか?)

title.メルヘン

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