尾崎先生
「あれ、司書さん。どうしたんだい」
朝、食堂にて。昨日は全館休館であった図書館だが今日からまた戦いの始まりになる。筆頭である徳田が目を丸くして司書を見ると、先日まで腰あたりにあった髪の毛が肩の長さになっていた。朝食を取ろうと食堂に来ていた文豪たちもなんだなんだと野次馬ではやし立てた。
「ああ、これ?」
失恋したから切ったんだよね。
さらりと言い切った司書に、周りが絶句する。
司書さんって好きな人いたんだ、という声が聞こえた。
「え、冗談だよ?」
「ん?どうしたのだ、汝。バッサリとやったな」
いつの間にか後ろに来ていた尾崎が短くなった髪の毛をみて呟いた。いきなり短くなったから落ち着かないんだよね。そう言い司書は席についたが、皆の疑問は残る。
絶対にあれは失恋している。
さて。文豪の誰かなのか、はたまた外の誰かなのか。司書が去った後、噂話は尽きなかった。
落ち着かない、といったふうに首のあたりを触り続ける司書に、尾崎はひょいと資料を渡した。
「そんなに気になるのか?」
「いきなりバッサリいったからね……」
資料に目を通しながら書類を作成していく。触る度にちらりと見える項に、尾崎は少しだけ唾を飲んだ。
いつもは見えなかった白い項。赤い痕を付けたいと思っても罪にはなるまいと、尾崎は髪をかきあげて唇を寄せた。
「、ッ、ちょっ、と!」
ちぅ、と赤い痕が一つ。れろ、と項を舐めるとビクリと司書が跳ねた。普段澄ましたような彼女が可愛い反応をするのが、たまらなく尾崎の悪戯心をくすぐった。
「どうした、司書」
低い声で笑うと、また司書がビクリと跳ねた。そっと耳を食むといい反応をする。司書は項と耳が弱いらしい。顔を覗き込むと、真っ赤な顔の司書と目が合った。
止められなくなりそうだ。そのまま唇を彼女の唇に寄せようとして……
「先生……何してるんですか、潜書の時間ですよ」
ナイスタイミングだよ徳田先生!司書は心の中でガッツポーズをした。尾崎は助手でありながら潜書の会派筆頭であった。
「ふむ、もうそんな時間であったか」
何事も無かったかのように徳田の方に向かおうとして、司書の耳元で。
「この続きは帰ってから、だな?」
と意地悪く尾崎は囁いて彼は司書室を出た。
更に顔を真っ赤にした司書に徳田が呆れながら告げる。
「首。見えてるから隠しておいた方がいいんじゃないかい?」
慌てて髪を整え、湯気でも出てしまいそうな司書に徳田がため息を付いたことは言うまでもないだろう。
尾崎先生えろい;;;;っていう話でした。
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