日々樹渉

(……またか)

かさり、休み時間のトイレから戻ってきてファイルを開くと、いつもの通り見たことの無い楽譜になっていた。いつもの通り、なんてあっちゃいけないことなんだけど、もうずっとこうだから諦めている。

(……旋律がぐちゃぐちゃ。よくこんなものかけたものだわ……というか、基本すらなってないわよ、これ)

最早曲ですらない楽譜を適当に仕上げていく。楽譜を入れ替えた本人は皆に褒められて誇らしげだけれど。
どうやら、前に提出した曲が強豪ユニットの持ち歌となったらしい。へえ、良かったね私の曲だけど。だいたい、自分の曲じゃないのに嬉しいものなのだろうか。

私は、あまり執着しないタイプだ。盗られてしまった曲はまあ、私の成績にはならないけど評価されているわけだからちょっぴり嬉しい。
そんなだから盗られるのだろう。知っている。
私が手直しした曲(ほぼ書き直してるけど)は、強豪ではないもののちらほらと持ち歌にしてくれているらしい。ありがたいことだ。

あ、また彼女が得意げな顔をしている。なんでも来年度から新設されるプロデュース科?のテスト生の候補生として選ばれたらしい。良かったわねー。これで盗作なくなるかしら。


朝早く登校して、日課になったトランペットを出す。この時間が一番好きだ。響き渡るトランペットの音を聴いて頭を切り替える。
特に大好きな曲を吹く。有名なアニメーション映画の挿入歌だ。
「♪〜」
バサバサバサッ、と鳥が羽ばたく音。あれ?いつもは見ない白い鳩がいる。
(敷地内に白い鳩はいなかったと思うんだけど)
むむむ……と鳩を見つめていると、白い鳩は私に寄ってきた。人馴れしてる……
「君はどこの子かしら?」
目をあわせながら聞いてみる……がまあ分かるわけがない。ん?そういえば、アイドル科に鳩を出すアイドルがいるって聞いたような……気がする。その人かも、しれない。
さっ、と手元にあった楽譜のルーズリーフを破り、言葉を書いていく。
「ちょーっと失礼するわよ〜。……君おとなしいわね」
はい、じゃあ皆巣に帰んなさい!と開放すると、バサバサと飛び立っていく。
「はー、今日も頑張るかー……」

「おや?どこに行っていたのです……?おっと、そんなに暴れないでください……☆珍しいですね。……おやあ?これは何でしょうか?……ふむ、『うちの科まで来ていたので気をつけてくださいね』……楽譜のルーズリーフですね、音楽科まで行っていたのですか?……ふむ、なかなか面白そうなお人です……☆私も手紙を書いてみましょう!」

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