1000hit記念企画
みんなが猫になっちゃった!01
(15禁程度の表現あり)
日本と違い夏でもカラッとしているイタリア。長靴とも形容される半島のつま先に当たる部分にあるヴァリアー本部。普段から怒号が飛んだり、燭台や重い置物が飛んだりガラスが割れたり騒がしいヴァリアー本部だったが、その日は普段に輪をかけてヴァリアー本部全体が騒がしかった。
きっかけは一人の女の悲鳴だった。
XANXUSは絹を裂くような高い悲鳴を聞くなり、その声の主の部屋に飛び込む。その両手には形態変化させた己の愛銃を携えて。そして鏡の前に立つ少女、ホームステイ中の沢田なまえの姿を己の視界に収め、固まる。
まだあどけなさを大いに残した顔立ち。それはいつも通りだ。異変は二つ。彼女の頭に見慣れないものが生えている。彼女の髪色と同色の三角形のそれは猫の耳なのではないかと彼は感じた。そして彼女の臀部。パジャマの履き口から飛び出しているのはやはり同じような色合いの細長い尻尾。
XANXUSは彼女に近づき、無造作に猫耳をつまむ。すると彼女はひゃんと子猫のように鳴いた。それに構うことなく彼は猫の耳を触って検分している。どうも頭蓋骨の形も変わっていて、頭についている方にも穴が空いていることがわかったところで彼は手を離す。彼は尻尾に手を伸ばした。骨もあれば神経も筋肉もある血の通った尻尾だ。どこから生えているのかという興味に駆られて下着ごとパジャマのズボンをずり下ろす。悲鳴を上げる彼女に構うことなく彼はまじまじと尻尾を見つめた。尾てい骨の辺りから生えている。尻尾の根元をすすすっと触ると彼女はひやっと声を上げる。
彼女の反応に気分を良くしたXANXUSは彼女に口付ける。舌を入れる深いキスに気を取られている少女のパジャマの裾をめくり上げ、胸を揉む。彼の手にすっぽりと収まるサイズの柔らかなものが手の中でグニグニと形を変えるのがいやらしい。時折つんと立った乳首をきゅっとつまみ、その度に漏れる彼女の声をどこか楽しそうに聞いている。
「朝からダメ!」
「いいだろ」
「ダメ」
なんとか男の魔手から逃れた彼女は、手鏡を探りXANXUSに突き出す。
「これ!見て!」
彼は鏡像の中に己の姿を認め、そして手鏡を彼女から奪い取る。己の感情の赴くままに、憤怒を冠するその炎を手鏡にぶつけた。一瞬で風化する手鏡。少女は鏡台で彼の姿を見せなくてよかったと心底安堵する。そんなことをした暁には、下手をすれば部屋ごと大きなこの鏡台を粉砕しかねない。
微妙な空気になるなまえにあてがわれた部屋。XANXUSは憮然とした表情になって黙り込んでいる。なまえはいそいそと着替えている。彼女の人並み外れた直感は着替えないと恥ずかしい目に遭うと訴えていた。超直感と言うよりかは女の勘だ。
「う゛おぉぉぉい!」
彼女の予想通り、着替え終えたタイミングで一人の男が入ってきた。銀の長髪。きっちりと着こなされた隊服。片手には剣を携えている。この手が義手であるということは何年か前のリング争奪戦で知ったことだったか。スクアーロだ。彼の頭部にも見慣れないものが生えている。尻尾がゆらゆらと揺れていた。
なまえはなぜか止まらない胸騒ぎに眉をひそめた。原因は分からないが嫌な予感しかしない。彼女はユニのように予知能力は持っていないので何が起きるのかは分からない。頼みの綱の超直感も基本的には対人用だ。未来を見透かすことはできない。全てを見透かすと言っておきながら適用される範囲が狭すぎる。内心でなまえは愚痴をこぼした。
二人の姿を視界に収めたスクアーロは、しばしぽかんとして、やがて一人で大爆笑の渦に飛び込んだ。豪快な笑い声が部屋に響き渡る。なまえの脳天が空気の振動に揺さぶられくらくらする。たまらず猫耳の方を手で塞ぐと少しはマシになったがそれでも二重の意味合いで頭にくる音量だ。隣のXANXUSを見やればかなり険しい顔で立っている。嫌な予感が増した。
「てめえ、そりゃあないぜぇ!ボスさんが、猫耳……ぶっ」
大笑いしながら言われた一言についにXANXUSはキレた。顔の痣が広がる。彼が以前に反乱を起こしたときに9代目によってつけられた凍傷は、解凍された今になっても一部が残り、一部は彼の怒りが最高潮になったときにこうして浮かび上がる。
おそらく、彼自身、頭に生える黒い猫耳が似合わないことは百も承知だろう。だが、それを他人に指摘されればイラつくものだ。
XANXUSは一度ホルスターにしまった銃を目にも留まらぬ早業で構える。そして天性の炎を蓄積、圧縮し始めた。ただし、炎が込められるのは、銃口付近だ。彼は自分の匣を形態変化させたままでいたのだ。なまえは嫌な予感が大的中したことを悟った。そして、笑い転げている男の命運が絶たれかけていることも。
スクアーロはこの状況でも笑い転げている。なまえは一瞬、笑って死ねるならそれで良いんじゃないかな、と現実逃避じみたことを考えたが、即座にいやいや人死にはマズいと考え直す。
そうしている間に発射準備は整ったらしい。
「かっ消えろ!!」
獅子の顔をした炎がスクアーロめがけてまっすぐに飛んでいく、はずだった。だが、炎はようやく風向きが悪いことに気付いて床に伏せたスクアーロのかなり上を通り抜けた。XANXUSの射撃の腕が悪いのではない。外部の要因が彼を妨害した。
XANXUSはその要因、腕を突き上げるようにして彼の射線を上にずらし、スクアーロを命拾いさせた張本人を鋭く睨みつける。即ち、己の腕に手をかけている沢田なまえを。
「邪魔すんじゃねえドチビ!」
「人が死ぬってときに黙ってられるわけないよ!」
にらみ合い。そしてXANXUSの盛大な舌打ち。
彼は不満そうに鼻を鳴らして得物を下ろし、形態変化を解いた上でホルスターにしまいこんだ。それを見届けたなまえはほっと息をついて彼の腕から手を離した。
そして部屋の惨状を見てため息をつく。
なまえの部屋と射線上にあったXANXUSの部屋は見るも無残な状態になっていた。壁は風化し、屋内にも関わらず外の風がダイレクトに吹き込んでくる。家財道具も風化しているだろう。
これは、修理が完了するまでXANXUS共々別の部屋で寝泊まりすることになるな。そう考えたなまえはもう一度ため息を付きそうになって、寸前でこらえた。
彼女にとって幸いなことは、彼女の宝物、ギターが消滅していないことだろう。
彼女は気を取り直して、蒼白な顔つきのスクアーロに視線をやる。風化した壁と同じ運命をたどることを辛うじて回避した彼は、引きつった顔つきで立ち上がると、ずかずかとXANXUSに近づいていく。その表情は紛れもない怒り。
おそらく本気で死にかねない攻撃に抗議したいのだろうが、彼女からすれば、彼の性格からして笑えば怒ると分かっていながら笑ったスクアーロにも問題があったように思えていた。もちろん、塵も残らないような攻撃を報復手段として選んだXANXUSにも問題はあるが。
「えっと、あの、ご飯食べない?お腹すいたでしょう?私はすごくお腹すいた!」
一触即発になりかねない二人の間に立ち、XANXUSの腕にしがみつきながらなまえがそう言うと、二人からの胡乱げな視線が突き刺さる。直後に三人の腹の虫が唱和した。XANXUSは舌打ちしスクアーロの隣を素通りする。傷顔の男は少し歩いてなまえがついてこないことを不思議に思ったのか訝しげな表情で振り返った。彼女はその顔についてこいという言葉を読み取り、彼の背中を追いかけた。
彼女が部屋を振り返ると、スクアーロは毒気を抜かれたような表情で彼女たちを見つめていた。そして彼もやさぐれたように舌打ちして、二人の後を追った。
日本と違い夏でもカラッとしているイタリア。長靴とも形容される半島のつま先に当たる部分にあるヴァリアー本部。普段から怒号が飛んだり、燭台や重い置物が飛んだりガラスが割れたり騒がしいヴァリアー本部だったが、その日は普段に輪をかけてヴァリアー本部全体が騒がしかった。
きっかけは一人の女の悲鳴だった。
XANXUSは絹を裂くような高い悲鳴を聞くなり、その声の主の部屋に飛び込む。その両手には形態変化させた己の愛銃を携えて。そして鏡の前に立つ少女、ホームステイ中の沢田なまえの姿を己の視界に収め、固まる。
まだあどけなさを大いに残した顔立ち。それはいつも通りだ。異変は二つ。彼女の頭に見慣れないものが生えている。彼女の髪色と同色の三角形のそれは猫の耳なのではないかと彼は感じた。そして彼女の臀部。パジャマの履き口から飛び出しているのはやはり同じような色合いの細長い尻尾。
XANXUSは彼女に近づき、無造作に猫耳をつまむ。すると彼女はひゃんと子猫のように鳴いた。それに構うことなく彼は猫の耳を触って検分している。どうも頭蓋骨の形も変わっていて、頭についている方にも穴が空いていることがわかったところで彼は手を離す。彼は尻尾に手を伸ばした。骨もあれば神経も筋肉もある血の通った尻尾だ。どこから生えているのかという興味に駆られて下着ごとパジャマのズボンをずり下ろす。悲鳴を上げる彼女に構うことなく彼はまじまじと尻尾を見つめた。尾てい骨の辺りから生えている。尻尾の根元をすすすっと触ると彼女はひやっと声を上げる。
彼女の反応に気分を良くしたXANXUSは彼女に口付ける。舌を入れる深いキスに気を取られている少女のパジャマの裾をめくり上げ、胸を揉む。彼の手にすっぽりと収まるサイズの柔らかなものが手の中でグニグニと形を変えるのがいやらしい。時折つんと立った乳首をきゅっとつまみ、その度に漏れる彼女の声をどこか楽しそうに聞いている。
「朝からダメ!」
「いいだろ」
「ダメ」
なんとか男の魔手から逃れた彼女は、手鏡を探りXANXUSに突き出す。
「これ!見て!」
彼は鏡像の中に己の姿を認め、そして手鏡を彼女から奪い取る。己の感情の赴くままに、憤怒を冠するその炎を手鏡にぶつけた。一瞬で風化する手鏡。少女は鏡台で彼の姿を見せなくてよかったと心底安堵する。そんなことをした暁には、下手をすれば部屋ごと大きなこの鏡台を粉砕しかねない。
微妙な空気になるなまえにあてがわれた部屋。XANXUSは憮然とした表情になって黙り込んでいる。なまえはいそいそと着替えている。彼女の人並み外れた直感は着替えないと恥ずかしい目に遭うと訴えていた。超直感と言うよりかは女の勘だ。
「う゛おぉぉぉい!」
彼女の予想通り、着替え終えたタイミングで一人の男が入ってきた。銀の長髪。きっちりと着こなされた隊服。片手には剣を携えている。この手が義手であるということは何年か前のリング争奪戦で知ったことだったか。スクアーロだ。彼の頭部にも見慣れないものが生えている。尻尾がゆらゆらと揺れていた。
なまえはなぜか止まらない胸騒ぎに眉をひそめた。原因は分からないが嫌な予感しかしない。彼女はユニのように予知能力は持っていないので何が起きるのかは分からない。頼みの綱の超直感も基本的には対人用だ。未来を見透かすことはできない。全てを見透かすと言っておきながら適用される範囲が狭すぎる。内心でなまえは愚痴をこぼした。
二人の姿を視界に収めたスクアーロは、しばしぽかんとして、やがて一人で大爆笑の渦に飛び込んだ。豪快な笑い声が部屋に響き渡る。なまえの脳天が空気の振動に揺さぶられくらくらする。たまらず猫耳の方を手で塞ぐと少しはマシになったがそれでも二重の意味合いで頭にくる音量だ。隣のXANXUSを見やればかなり険しい顔で立っている。嫌な予感が増した。
「てめえ、そりゃあないぜぇ!ボスさんが、猫耳……ぶっ」
大笑いしながら言われた一言についにXANXUSはキレた。顔の痣が広がる。彼が以前に反乱を起こしたときに9代目によってつけられた凍傷は、解凍された今になっても一部が残り、一部は彼の怒りが最高潮になったときにこうして浮かび上がる。
おそらく、彼自身、頭に生える黒い猫耳が似合わないことは百も承知だろう。だが、それを他人に指摘されればイラつくものだ。
XANXUSは一度ホルスターにしまった銃を目にも留まらぬ早業で構える。そして天性の炎を蓄積、圧縮し始めた。ただし、炎が込められるのは、銃口付近だ。彼は自分の匣を形態変化させたままでいたのだ。なまえは嫌な予感が大的中したことを悟った。そして、笑い転げている男の命運が絶たれかけていることも。
スクアーロはこの状況でも笑い転げている。なまえは一瞬、笑って死ねるならそれで良いんじゃないかな、と現実逃避じみたことを考えたが、即座にいやいや人死にはマズいと考え直す。
そうしている間に発射準備は整ったらしい。
「かっ消えろ!!」
獅子の顔をした炎がスクアーロめがけてまっすぐに飛んでいく、はずだった。だが、炎はようやく風向きが悪いことに気付いて床に伏せたスクアーロのかなり上を通り抜けた。XANXUSの射撃の腕が悪いのではない。外部の要因が彼を妨害した。
XANXUSはその要因、腕を突き上げるようにして彼の射線を上にずらし、スクアーロを命拾いさせた張本人を鋭く睨みつける。即ち、己の腕に手をかけている沢田なまえを。
「邪魔すんじゃねえドチビ!」
「人が死ぬってときに黙ってられるわけないよ!」
にらみ合い。そしてXANXUSの盛大な舌打ち。
彼は不満そうに鼻を鳴らして得物を下ろし、形態変化を解いた上でホルスターにしまいこんだ。それを見届けたなまえはほっと息をついて彼の腕から手を離した。
そして部屋の惨状を見てため息をつく。
なまえの部屋と射線上にあったXANXUSの部屋は見るも無残な状態になっていた。壁は風化し、屋内にも関わらず外の風がダイレクトに吹き込んでくる。家財道具も風化しているだろう。
これは、修理が完了するまでXANXUS共々別の部屋で寝泊まりすることになるな。そう考えたなまえはもう一度ため息を付きそうになって、寸前でこらえた。
彼女にとって幸いなことは、彼女の宝物、ギターが消滅していないことだろう。
彼女は気を取り直して、蒼白な顔つきのスクアーロに視線をやる。風化した壁と同じ運命をたどることを辛うじて回避した彼は、引きつった顔つきで立ち上がると、ずかずかとXANXUSに近づいていく。その表情は紛れもない怒り。
おそらく本気で死にかねない攻撃に抗議したいのだろうが、彼女からすれば、彼の性格からして笑えば怒ると分かっていながら笑ったスクアーロにも問題があったように思えていた。もちろん、塵も残らないような攻撃を報復手段として選んだXANXUSにも問題はあるが。
「えっと、あの、ご飯食べない?お腹すいたでしょう?私はすごくお腹すいた!」
一触即発になりかねない二人の間に立ち、XANXUSの腕にしがみつきながらなまえがそう言うと、二人からの胡乱げな視線が突き刺さる。直後に三人の腹の虫が唱和した。XANXUSは舌打ちしスクアーロの隣を素通りする。傷顔の男は少し歩いてなまえがついてこないことを不思議に思ったのか訝しげな表情で振り返った。彼女はその顔についてこいという言葉を読み取り、彼の背中を追いかけた。
彼女が部屋を振り返ると、スクアーロは毒気を抜かれたような表情で彼女たちを見つめていた。そして彼もやさぐれたように舌打ちして、二人の後を追った。
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